06-5





リリの声にため息をつく。

ここでリリの相手をするわけにはいかない。
宙を見て一人で話すなんて、一歩間違えればホラーだ。
不思議ちゃんに思われてしまいかねない。
残念ながら、私は不思議系でも電波系でもないのだ。


そんな姿をさらすわけにはいかないので、私はリリに見つかる前にこの場から立ち去ろうと考え、香穂ちゃんに声をかけようとした。



「ね、香穂ち……香穂ちゃん?」
「花梨……ねぇ、アレって………」
「え?」



香穂ちゃんは空を指差し固まっている。

蜂でもいるのかと思い、指差す方を見るとそこにはリリがいた。

しまった、見つかってしまった。
一生の不覚!


ん、待てよ?
もしかしなくても香穂ちゃんが指差してたのって…



「お前、我が輩のことが見えるのか?」



どっかで聞いたセリフだ。
このセリフは、ファータが初対面の相手に対してよく使うものだったはず。

私とリリは初対面ではない。
まさか、今更見えるかどうか確認するはずはない。

ということは……香穂ちゃんが指差していたのはリリだったの?


落ち着いて考えてみてそう思いあたったので、事実を確かめようと慌てて香穂ちゃんを見る。



「ねぇ、香穂ちゃ………え?」
「走って逃げたのだ。」



横にいるはずの人がいなくなっていたということに驚き、またしても最後まで名前を呼ぶことができなかった。
リリによると、走っていってしまったらしい。

大方変な生き物を見て、驚きのあまりとりあえずその場から逃げてしまったのだろう。
今頃は教室に向かって全力で走っているに違いない。


驚かせた張本人はといえば、あの者の名前を聞くのだ、なんて意気込んで行ってしまった。


このままではあまりにかわいそうだ。
間違いなく困り果ててしまうであろう香穂ちゃんを助けるべく、私も教室へと急いだ。








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