05-2
新しいクラスになってはや一週間。
どこかよそよそしかったクラスメイトたちも、随分仲良くなった。
この春入学した一年生たちは、ようやくうちの制服に慣れてきた頃だろうか。
ただ校舎内の構造を覚えるには至ってないようで、まだまだ時間ギリギリまでうろついて焦ってる一年生を見る。
始業式の日以来、何度かリリに会って話をしている。
まぁ、あたりさわりのない話ばかりだけど。
というかほとんどリリの愚痴というか…
やれ今日は鳥に追いかけられただの、やれ今日は猫に追いかけられただの。
あの子ってば追いかけられてばっかりなんだもん、笑っちゃうよね。
「香穂ちゃん、今日遅いね。」
「香穂にしては珍しいよね。ま、あの子のことだからギリギリに教室に飛び込んでくるって。」
二人の声に、外に向けていた視線を教室内に戻す。
この二人は新しい友達、美緒ちゃんと直ちゃん。
たった今話題にあがっている香穂ちゃんも加えて三人が去年も同じクラスだったそうで、とても仲がいい。
彼女たちのことを知ったのはこの新しいクラスになってからだけど、直ちゃんと席が近かったことから仲良くなったのだ。
三人ともサバサバしたタイプでとても付き合いやすいと思う。
「あ、ほら!香穂ちゃんきたよ!!」
「あーあー、もうなりふりかまわずだねぇ。」
「香穂ちゃーん、ファイトー!!」
美緒ちゃんの声に再び視線を外に向けると、正門前を必死に走る女の子がいた。
頑張って走る姿に、思わずエールを送る。
すかさず直ちゃんに、そんな間延びしたエールじゃ応援になんないって、とツッコまれたけど。
あ、でも今日はHR、自習になったんだよね…
だからそんなに慌てる必要はないんだけど、当の香穂ちゃんはつゆ知らず。
けたたましい扉の音をさせて、香穂ちゃんは教室に飛び込んできた。
HRやってたらどうするつもりだったんだろ…
っていうか香穂ちゃん走るのはやっ!!
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