05-3





「香穂、今日HR自習だよ。」
「えぇ〜っ!!」



息を切らして走ってきたものの、HRがないと知り落胆する香穂ちゃん。
うんうん、気持ちはよーくわかるよ。



「香穂ちゃんおは…」
「花梨お願い!英語の課題見せて!!」
「よう……へ?」



朝っぱらからのとんだ苦労をねぎらおうと、声をかけようとした私を見るやいなや、香穂ちゃんは必死の形相で頼み込んできた。
走ってた時より必死に見えるんですけど。


「もしかして忘れちゃった系?」
「いや、できう限りの努力はしたんだけどね…」
「途中で寝ちゃったんだ?」
「返す言葉もございません。」



ノートを貸そうと机の中を探る。
んーと…英語英語っと…

ノートを探す私を期待に満ちた目で見つめる香穂ちゃんの横で美緒ちゃんがもう待ちきれないとばかりに話始めた。



「そんなことより!香穂ちゃん、知ってる?学内コンクールの噂!!」



………そんなこと?
美緒ちゃんにとっては岸田先生の課題より例の噂の方が勝るのか。


今朝から美緒ちゃんはこの話ばかりしている。

というのも、どうやら学院中でそろそろ学内コンクールが開催されるのではないか、とまことしやかに囁かれているからだ。
そして、それに付随する形で伝説となっているらしい例の噂が広まっているらしい。


もっとも、学内コンクールについては、リリが今年こそ開催するのだ、とかなんとか言っていたから十中八九開催されるだろう。

ただ例の噂については美緒ちゃんに聞かされるまで全く知らなかったけど。








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