05-1









初めて出会ったのは、まだほんの幼い子供だったとき。
両親に連れられて行ったドイツでだった。


2人の音に圧倒され、しばらくその場から動くことができなかったのを、今でも鮮明に覚えている。


忘れられもしない、あの光景、あの音色。

幸せで、それでいて切なさも感じさせる。
俺はその音色を追い求めつづけ、心から欲していた。


どこまでも俺を惹きつけた、とても魅力的な音色だった。





次に出会ったのは、君がこれからうちで生活することになったとき。

再び会ったとき、君はもうすでにバイオリンを奏でられなくなってしまっていた。


1度だけ見た、君がバイオリンに手をのばすところを。
だが次の瞬間、のばされた君の手はバイオリンに届くことなく、力なく君の体の横にたれさがっていた。

俺は声をかけることもできずにただその様子を見守っていた。


他人の事情に干渉するつもりはないし、君がバイオリンを弾かないというならそれまでだ。
そう思っていた。



だけどずっと願っていたんだ。
心の片隅で。


もう一度あの音色を聴かせてほしい、と。








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