初めて出会ったのは、まだほんの幼い子供だったとき。
両親に連れられて行ったドイツでだった。
2人の音に圧倒され、しばらくその場から動くことができなかったのを、今でも鮮明に覚えている。
忘れられもしない、あの光景、あの音色。
幸せで、それでいて切なさも感じさせる。
俺はその音色を追い求めつづけ、心から欲していた。
どこまでも俺を惹きつけた、とても魅力的な音色だった。
次に出会ったのは、君がこれからうちで生活することになったとき。
再び会ったとき、君はもうすでにバイオリンを奏でられなくなってしまっていた。
1度だけ見た、君がバイオリンに手をのばすところを。
だが次の瞬間、のばされた君の手はバイオリンに届くことなく、力なく君の体の横にたれさがっていた。
俺は声をかけることもできずにただその様子を見守っていた。
他人の事情に干渉するつもりはないし、君がバイオリンを弾かないというならそれまでだ。
そう思っていた。
だけどずっと願っていたんだ。
心の片隅で。
もう一度あの音色を聴かせてほしい、と。
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