フッカツ
旭さんがスパイクを決めた。
三枚の壁を打ち抜いた。
「旭さぁぁぁぁぁん!ハグしましょう!!
エースの復活祝いに!!!カンパイ!!!」
「うるせぇ陽」
「けっ!お前も泣いてんじゃねぇか陽!」
「泣かずにはいられないだろ!なんか色々込み上げてくんだよ!ブワッと!
俺がどれだけ!この日を待ったか!なぁノヤ!?」
「旭さん!全然ジャンプできてないんじゃないですかっ!?
1ヶ月もサボるからっっっ」
「うん・・・スミマセン・・・」
「きびしーなぁ、西谷」
「ノヤっさん聞いてねぇぞ」
町内会 07 − 烏野 05
「さっこぉぉぉい!!!!」
「陽ナイスレシーブ!」
「ハイ!」
北来、影山。____次は誰を使う!?
次の瞬間。視界で理解しきれないことが起こる。
日向が影山のトスをギリギリになって手に収め、そのままズドンと1発。速攻。誰もいない。西谷さえ間に合わない。
というか、見えない程のスピード。
サインも声掛けもない。目も瞑ってる。
しかし、腕だけはフルスイング。小さな腕から絞り出されるパワー。
やべ、俺も負けてらんねぇな。
「ナーイス!日向影山!」
「大げさなこと言ってるわけじゃ無かったんだな・・・」
「すっげぇじゃねぇか翔陽!なんだなんだ!うっかり見入っちゃったぞ!」
その後も西谷の正確なレシーブ、菅原の平行トスでひと月ぶり、しかしドンピシャな東峰のスパイクが決まる。
反対コートでも澤村の安定感あるレシーブ、影山の精密トス、そして___
「オイシイいっぽん!!!ごっつぁんです!!!」
180cmの野郎共がジャンプする三枚ブロック。2m越えの戦い。普通ならドシャット。
だけど、アイツには関係ない。
北来陽は、更に上を行く。
バックスイングで溜めた勢いはその長い腕の分だけ大きい。恵まれた身長。ジャンプ力。
充分な気迫。闘志なら有り余るほど。
奴のスパイクは、雷のようにコートを一閃する。
「やっべ!アウトか!飛ばしすぎた!
すんませーん!!!」
「・・・お前、陽、」
「ヒッ!大地さん!!お許しを!!」
「・・・この1ヶ月。病院行かずに何してたんだ」
「え?病院ですけど!
あの、俺ちゃんと骨折れてましたから!」
「コソコソ鍛錬積みやがってあのヤロー!!」
「いだっつ!!殴るな龍!」
「やばいな、陽。全然鈍ってない」
「・・・目が、ギラギラして怖かった、」
「旭さんビビってんじゃねぇっすよ!陽ごときに!」
「おい夕!ごときって何だ!ごときって!」
凄い。ほんとにケガ明けなのか、この人。
何と言ってもその背丈。
どれだけブロックがいようがお構いなし。
確実な1本に繋ぐスパイク。その姿はまさに___
『空中戦の覇者』
「オイ。日向」
「ん?」
「あの人たちのスーパープレー、超えるぞ」
29.8.26
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