俺が居れば お前は最強だ

町内会 02 【2】 02 烏野

あんなふうな身長とパワーがあったらなぁ、俺も・・・
いやいや!小さな巨人は小さかったけど凄かったんだ!俺よりはでかいけど!

「どうした?日向」
「え?あ、陽さん!」
「旭さんのスパイク、無理にお前が止める必要ない。後ろには俺がいる!安心して飛べ!!」
「・・・あ、あざす!」

あ、カッコイイ。大っきい身長、ドンと構えた姿。

コートに立っただけで雰囲気を変える人って、こういう人のことを言うんだ。

俺は陽さんと同じコートでプレーしてまだ少ししか経ってないけど、分かる。この人にボールが回ってくるのはピンチの時ばっかりだ。
どこにいても、安心してボールを預けられる。この人に繋げば大丈夫って。託したいって思う。


相手コート。菅原さんにトスが回る。やっぱり次に打つのは、

「旭!!」

エース。


_________ああ、いいなあ



ギュンッッッ

「日向!?」
「!?」

バコォォォオン・・・

東峰のスパイクは日向の顔面にヒットした。日向は仰け反りひっくり返る。
試合は一時中断。周りに駆け寄った2・3年生らに、日向は慣れてますから!と赤くなったオデコをさすった。

「ノヤもよくボールとチューしてたよなぁ!」
「アハハ!懐かしいな!」





「何・・ボケェーとしてた・・・試合中に」

その中、影山だけ。空気が一味違った。
怒鳴らないのは、マジ怒り。日向は前に後頭部にサーブをぶつけた時のことを思い出して、冷や汗を垂らした。

「俺は、知ってるぞ」




「エースはカッコイイけど
自分の一番の武器は囮なんて地味でカッコ悪い

自分に東峰さんみたいなタッパとパワーがあればエースになれるのに」

影山は思い出していた。
囮はパッとしない。エースってすげぇな。
日向の言葉の数々を。

旭さん、田中さん、陽さん。エースの器は沢山いる。だけどエースが生まれるのは、必ずその影に囮がいるから。

俺は知ってる。
だけど日向は、貪欲に、まっすぐに。



「エースがいるって分かってから、興味とか憧れの他に____

嫉妬してたろ」


「羨ましくて、何が悪いんだ___

元々でっかいお前になんか 絶対わかんないんだよ!!!」




「今のお前は

「ただのちょっとジャンプ力があって素早いだけの下手くそ」だ

大黒柱のエースになんか なれねえ」

「_____!」

「ちょ、ちょい」
「おい!」
「落ち着け龍、まだ続きが」



「でも!」



「俺が居れば お前は最強だ!!!」



「田中さんはどんな状況でもどんなところからでも、狂いのないスパイクを打つし、
陽さんは誰の手も届かないダントツの高さからスパイクを打つ。

エースの東峰さんのスパイクはスッゲー威力があって三枚ブロックも打ち抜ける!」

「「ふふん」」
「調子のんなよ?お前ら」
「えっ いや、でも毎回じゃないし、えーと」
「旭さん動揺しすぎっす!」


「じゃあお前はどうだ。
俺のトスがお前に上がった時、お前はブロックに捕まったことが

あるか」

試合再開のホイッスルが鳴る。
相手コートからのサーブ。陽の腕が捉えて、影山の方へ番が来る。

「オーライ!」

いつもより落下点の見極めを早く。日向をしっかり視界に。ブロックの付いてくる場所はどこだ。

東峰さんと、町内会のミドルブロッカー。2枚。日向は飛ぶ直前の動作までし終えている。けど_____

「躱せ!!!

それ以外にできることあんのか!ボケェ!」

打ち抜けないなら 躱す

勝負どころはここじゃない。
だけど日向の素早さがあれば、できる。

「は!?」
「行けぇ!日向!!」

目の前にブロックがいたら 今の俺に勝ち目なんかない
エースみたいな戦い方もできない

でも。

俺が居れば

空、スパイカーだけ見える頂の景色。
スカぁっと通る、見える道筋。

お前は最強だ

ガッ!!!
思い入れのある1本。打ち抜いた日向のスパイクは、嶋田の腕を跳ねてコート外へ飛び出した。



「お前はエースじゃないけど!!
そのスピードとバネと 俺のトスがあれば!
どんなブロックとだって勝負できる!!!


エースが打ち抜いた1点も
お前が躱して決めた1点も


同じ1点だ!



エースって冠がついてなくても!お前は誰よりも沢山の得点を叩き出して!だからこそ敵はお前をマークして!
他のスパイカーはお前の囮のおかげで自由になる!エースもだ!!

ね!?田中さん!陽さん!」

「おうおう!そうだぞ!お前の囮があるのと無いのとじゃ、俺達の決定率が全然違うんだぞ!」
「怪我明けの俺にはありがたいぜ!翔陽!!」
「陽てめぇ!怪我明けとかカンケーねぇぞ!ちゃんと俺んとこまで飛ばせコラ!!」
「あはは!言ったなノヤ!ドンピシャに打ってやるぜ!ヤケド覚悟しとけよ!」
「おうよ!」
「コイツら怖・・・」









「それでもお前は!今の自分の役割がカッコ悪いと思うのか!!」





また俺にフリーで打たしてくれよ?

月島みたいなでかい奴が、お前の動きにアホみたいに引っかかったら気持ちいいだろ




頂の景色


手に当たったぁぁぁ!!!

手でとらえた時の感覚。

「・・・わない、」

「あ?」




「思わない!!!」

「よし!!」



「日向、今の一発すごかったぞ!」
「旭さんより飛んでたぞ!」
「そうだぞ!翔陽!」
「えっ」
「旭さんの心ブレイクすんなっつったろ!陽もノヤっさんもォォォ!」
「いいんだよヘナチョコだから」
「大地・・・」




「練習中断さしてすみませんでした!!
試合の続き、お願いします!!」



29.8.27

[ 9/38 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -