意地を見せろ

掌1枚 厚さ約2cm

同年代の連中と比べても ひと回り小さな手

このボールと床の間の『2cm』が

エースの命を



繋ぐ




「カバー!オーライ!」

西谷が上げてくれた・・・!!
俺は、どうする!?誰に上げる!?
多分レフトからのオープンが一番確実・・・でも

もう一回 旭に上げて また旭が止められたら___





「菅原さん!!!」

_____影山!?

「もう一回!! 決まるまで!!」

もう一回・・・でも____


苦しい時やレシーブが乱れた時 ラストボールを任されるのがエース

わかってる
わかってるけど

またここで
トスを待っていない旭にトスを上げて三枚ブロックと勝負させるなんて___











スパイクが打てるのは、トスが上がるから。

「俺にトス上げさせてくれ 旭」

トスが上がるのは、そこへ繋ぐレシーブがあるから。

「だからもう一回 トスを呼んでくれ!エース!」

スパイクを打つのだって、俺だけじゃない。

「旭さん。逃げるなんて許しませんよ。最後まで俺と、勝負してくださいよ」

「エースの座、空けて待ってます」


こんな頼りない俺の背中を、追いかけてくれる後輩がいる。
俺にチャンスを与えてくれる。繋いでくれる仲間がいる。

皆がそれぞれの仕事をしてたのに__俺は・・・

「一人で勝てないの 当然です」

「だから皆、旭さんを『エース』って呼ぶんだ」

「お前がまだバレーを好きかもしんないなら 戻ってくる理由は充分だ」

「頑張るぞ、頑張ろうって言ってくださいよ!前みたく!あなたもまだ、終わっちゃいない!」

「俺が繋いだボールを アンタが勝手に諦めんなよ!!!」



(ここはバックアタックで嶋田さんに____)
「嶋田さ_」


「菅原ァーーーーーー!!!!!」



「もう1本!!!!!」




___・・・ああ、

エースが
待ってる

トスを呼んでる

「旭・・・!!」

ネットから少し離した 高めのトス
何本も何本も上げてきた 旭の得意なトス

単純なこのトスでも 精一杯 丁寧に。






俺にくれ。持って来い。レフト。もう1本。
あなたのひと声で、場の空気が変わる。

高身長でも、アタックの成功率でもない。

エースに必要なのは、絶対的な信頼。
流れを変えるその1本。

鉄の壁に妨げられたって。
何度失敗したって。
アイツが後ろで待ってる。

紛れもない。旭さんにしか出来ない。務まらないんだ。だから。

_____意地を見せろ!!!


「決めろ!!!エース!!!」





頼もしい背中の守り
俺のための一番打ちやすいトス

不足なんてない

単純で当たり前のことを
いつの間にか忘れていた

俺は

ひとりで戦っているのではない



託されたラストボール

何度壁に当たろうとも______打ち抜く






打ち切ってこそ



エース!!!!!!




29.8.25

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