負けるのかもしれないね
「あ、烏野の引っ込んでるセッター呼ばれた。交替っぽいな」
・・・・・あとワンプレーかな。
「スガ」
「旭・・?」
「次の1本、俺に寄越せ。絶対決める」
まさに有言実行。東峰のスパイクは金田一のブロックを撃ち抜き、烏野は1点を取り返した。
選手交替
2 菅原孝支 → 10 影山飛雄
「・・・分かってると思うけど、」
「?」
「うちの連中は、皆ちゃんと強いからな」
「・・・・・うすっ」
「よし!
勝_____」
【 勝 て よ 】
「_______勝つぞ」
その後、影山のサーブや合図を変えた神業速攻で着実に点を積み重ねた烏野は、青城より先にマッチポイントへ辿り着く。
及川、中学3年生。
北川第一で彼はベストセッター賞を受賞した。
及川徹は基本的にヘラヘラしている男だ。
でもそいつが、笑わない時期があった。
他人より体格に恵まれていた。センスにも恵まれていた。
特に中学に上がってからの及川の上達ぶりは群を抜いていた。
それでも___
超えられない壁は常にあった。
『怪童』牛島若利を迎えて県内最強と言われるようになった、白鳥沢学園中等部。
試合すれば負けた。1セットも取れなかった。
もっと上へ
もっと高い舞台へ
白鳥沢の牛島若利。
阻まれ続けて中学3年。
背後に___天才が現れた。
影山飛雄。
奴のセンスは圧倒的に輝いていた。
「ゆくゆくはセッターだな」
また、及川の精神を更に追い込むように現れた千鳥山中の北来陽。
とある日の練習試合。
「今年の県代表メンバーだとよ。まだ2年なのにな」
倒したい敵が、目の前に2人もいる!負ける訳にはいかない。俺が負ける訳ない。
負けてたまるか!!
この勝負、俺が_____
ピピーッ!
3セット目
烏野 22−24 青城
先ほど投入されたピンチサーバー、山口は失敗してしまった。
烏野に、明らかな焦りが見え始める。
だけど____ダメだ。ここで負けを覚悟したら。
一瞬でも負けのイメージを過ぎらせちゃ、気を張ってなきゃ、もってかれる。青城にこの空気も勝負も、全て!!
「野郎どもビビるなァァァァ!!!!」
「前のめりで行くぜ!!!!」
西谷の声かけに、コート内の空気が入れ換えられる。良かった。北来は現在西谷と交代のためコート外から見守っている。
勝って、まだこのチームでやりたい。
俺も、コートに立ちたい。
そんなの誰だって同じだけど、また勝敗が決まる瞬間にコートに居られないのは悔しい。
やがて試合は延長、デュースに持ち込まれた。
烏野 31−32 青城(マッチポイント)
青城エース岩泉の攻撃を西谷が拾う。影山が繋ぐ。
影山は日向のカードを選んだ。いや、それしか目に見えなかったと言ってもいい。追い込まれたこの場面、視野が狭くなってもしょうがない場面。
速攻。相変わらず早い。青城の守りが口をボカンと開けてたのはつい何時間前の話。
今は、違う。
日向の攻撃は、青城の壁にぶち当たる。
飛雄。
急速に進化するお前に、俺は負けるのかもしれないね
「拾ええええええ!!!!」
でも、
それは今じゃない
3セット目
烏野 31−33 青城
勝者: 青葉城西高校
29.9.3
[ 22/38 ]
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[mokuji]
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