“先輩”の実力

烏野 選手交代
10 影山飛雄 → 2 菅原孝支

「大丈夫! 一本切ってくべ!!」



「・・・・・。」
「コラコラ、陽。
影山は気にすんな!日向がいれば大丈夫だべ!今は目の前の勝負!
いつものアレ、頼んだぞ!」
「よっしゃあ!スガさんアレやるんすね!!」

「岩ちゃん。
あの2番君がブロックにいるとこ低いから狙い目」
「おう」

ピッ!

花巻のサーブ。澤村、菅原、田中と相手に帰るボール。渡が拾い及川、そして___
「岩ちゃん!」

狙い目はブロックの低い__ストレート、

「あっ!岩____」

ドガッ!!!

ピッ!
「うはっ!ドシャット!ストレート来るって読んでたのかな?」
「なっ!上手いことやったな!相手のスパイク直前でブロッカーの位置をスイッチ!!」

「いえーいスガさぁぁあん!」
「はい!どうどうどう!」

「まるでティラノサウルス使い」
「打つ直前まで170だった壁が、急に2mとか味方でもビビるぜ・・」

サーブ権を得た烏野は日向を前に据えたローテに。

「陽!あと7点サービスエース!任せたぜ!」
「おっしゃああ!7点取るぜ!!」

ピッ!!

キュッキュッ_____ドパッッッ!!

「スンマセン!」
「次はとるよ国見ちゃん!」
「うっわ!!嫌なコース狙うなアイツ!」
「ナイスナイス陽!!」
「恐竜の実力ぅ!!」

ピッ!

「ナイスレシーブ!」
「今度は完璧に返された!」
「同じコース狙うな学習しろ北来ィィ!」
「スンマセン!!」

2度目には拾われた北来のサーブ。及川へ回され、松川のAクイック。しかしこれを前衛の壁、日向が真っ向から防ぐ。
「日向!スゲースゲー!!」
「菅原さんの言う通りでした!!」

コートの外から見ていた時。
確かに悔しさはあったけど 中にいるよりずっと冷静にゲームが見えてた気がする。

試合に出られなかった時間も、ちゃんと糧になってる___!!


ピッ!
「北来もう一本ナイッサー!!」

「返ってくるぞ!チャンス!」

「ダイレクト?」「いや、違う!」
「ナイスレシーブ大地さん!」
「スガっ!!」

『天才1年にレギュラーを譲った可哀想な3年生』
スガは傍目にはそう見えるのかもな。
_____でも


菅原の待つネット際目掛けて走る田中と日向。
2人は菅原の手の合図で次の攻撃が何かを知っている。
だから影山とは違って、何も言わない。
『来い』『くれ』で普通の速攻と神業を見分けていた青城ブロッカー、岩泉と松川は戸惑う。

「飛雄じゃないんだから神業速攻はないよ!」

菅原の手元へボールが落ちてくる。日向と田中はもう飛んでいる。菅原がボールを持っていくのは____

スガは、ずっとコートにたった時だけのことをシュミレートしてきた

「っっっ!!」

烏野のもう一人のセッターだ!!

ピッ!

「ナイス日向ぁ!」
「「よっしゃあ!」」

俺は影山と比べたら、技術も身体能力も劣るけど
チームのことは少しだけ長く見てきた

俺 対 青葉城西だったら絶対敵わないけど__
俺の仲間はちゃんと強いよ












青城 24−15 烏野

そうして迎えた青城マッチポイント。及川のサービスエースで一気に2点をもぎ取ったのだ。

「花巻ナイスレシーブ!」
「日向!ダイレクトだ!」
「うっ、えっ」

ぽよん、と弱く出された日向のダイレクトを青城はきっちり拾っていく。

「下手くそぉぉぉ!!」

金田一に託されたボール。正面に立った日向は菅原の言葉を思い出す。青城の速攻は俺達のやるのより少しだけゆっくり。だから、いつもより少しだけ溜めてから___

どッッ!!!
「よっしゃ!ナイス日向!」

「後ろ下がれェェェ!!!」

日向のブロックしたボールは青城のエンドラインギリギリに落ちる。

ピッ!!ピピーーッ!

青城 25−15 烏野

1セット目終了

「アウトか!」
「惜っしい!!」







2セット目

烏野 14−15 青城


自分がベンチに下げられるってことは、自分が用済みだって言われた証拠だと思っていた。
実際中学の負け試合はそうだったと思う。

でも____


今は後ろにお前が控えてる。すごく頼もしい。

俺と菅原さんの出来ることは違えけど、多分目的は同じだ。



出たい・・・出たい・・・出たい!試合に出たい!!


もっとここにいたい。こいつらと一緒にいたい。

コートの中の緊張をくれ

まだ、こいつらと一緒に戦わせてくれ

息苦しさをくれ

ここに立たせてくれ

ボールに触りたい 戦いたい!

自分の手でトスを上げたい!


何度でも!!!


ならば・・・

俺は俺なりのベストをお前はお前なりのベストを。
それで____



今、目の前の試合に勝て!!!!!



29.8.31

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