及川徹は天才ではない

高校二年の時、優秀だった中学の後輩の異名を聞いた。
『コート上の王様』
なんて誉れ高い異名だと思った。
でも試合を見て『意味が違う』と分かった。

力がある。勝利に対して貪欲。才能がある。他人よりも圧倒的に。それが飛雄を強くし、

そして唯一の弱点になる。



1セット目。追い詰められた烏野はブロックを避けようと、確実性よりもスピードを求め、全体に変な加速が掛かってゆく。
「・・・北来。この流れ、切って来い」
「ハイ!!」

日向サーブ 西谷OUT 北来IN

「影山ぁぁ!」
「はっ、はい!?」

「及川さんに腹立つの、すっげえわかるぞ!」

「・・・・は?急に何言い出すの陽」
「俺もすっげえ分かる」
「ちょ、岩ちゃん!」

「けど及川さんは、めちゃくちゃ努力家なだけで______別に天才ってわけじゃない!
お前、中学から見てきただろ!

その努力家を!天才って呼ばれてる影山なら!止めれる!

これ以上!あの人の好きにはさせねぇぞ!!」

「陽さん・・・!!ウス!!!」

「及川ぶっ潰すの会か」
「何なに。腹立つんだけど」


その後、日向のサーブが放たれ、烏野へ及川−金田一へ繋がれた攻撃が返ってくる。
「大地さん!!」
「っ!!」
「ナイスっす!早くトス寄こせ影山!」
「ハイ陽さん!!」

あの速攻を使うチビちゃんは今後衛。攻撃はトスを呼んだ陽しか______飛んでない!?

「囮・・ゼロ!?」


「東峰君の囮なしで飛ぶなんて__!!危ないんじゃ!?」

シュッ_____

「陽さん!!」
「うおら!!!!」

ズドンッッ___!!!!

ピッ!!

「スミマセン及川さん!無理でした!」
「いいよいいよ。今のは____速すぎる」
チビちゃんとは違った速さだ。

いや、多分チビちゃんの速攻より速い。
トビオのトスは正確で速い。それに元々背の高い陽はブロックに対してそこまで飛ばなくても大丈夫だ。

まさにトビオと陽、2人の才能が組み合わさった技。

けど_____まだ7点差。絶対にこれ以上埋めさせない。

「日向もう一本ナイッサー!!」

チビちゃんのコースを意識しないサーブがまた飛ぶ。まだ完成されてない、威力も弱い!

ここは俺が、取る!!

「___っ!?」

日向のサーブをオーバーハンドで取った及川は、そのまま岩泉にトスを回す。

「2番!!」

トビオと陽がブロックに跳ぶ。
けど、まっつんは囮だよ。本命はマッキー。

松川が飛ぶ。つられて影山と北来が飛んだ瞬間、そのボールは横にずらされ花巻の手に収まる。

どッッ!!!

ピッ!!
「やられた・・・」
「影山!切りかえてくぞ!」

トビオの調子をドンドン狂わせてけばいい。いま、おーんなじ手で引っかかったんだもんね。悔しい悔しい。天才振り回すって、面白いな。

「影山頼んだ!」
「やばっ・・!」
「おっ、」


「「押し合い!!」」

ネットを挟んでボールを押し合う影山と及川。及川の方が一枚上手だった。1度力を弱めて自分の方へボールを寄せ、影山の力がかからなくなった瞬間を狙って再び相手コートへ押し出す。

ドッ!
力の勝負ではなく、技術、頭脳で負けた影山はコートに尻餅をつく。

「ーーーっ!!」
「か、影山?大丈夫か?」

______くそ!くそ!
負けてたまるか・・・負けてたまるか!!

勝って コートに残るんだ!!!

「急ぐな影山!」

影山のトスは速すぎる。北来のジャンプを見ずにトスを飛ばしやがった!!
だけど_____さすがに無理だろ、という場面で北来には咄嗟に相手に合わせる応用力がある。

それが北来にしかできないことを、及川は知ってる。だからこそ、奴に絞ってブロックを固めた!!

「十分に飛び切れてない陽に、3枚ブロックは無理だ!!」
「___うっっ!!」

ピッ!!

青城 20−12 烏野

「陽今のフォローいいぞ!ドンマイドンマイ切り替えてけよ!」
「本来はコンビミス・・・上手いな、あの背ぇ高」



______及川はセンスもある。努力も惜しまない。ただ二個下の『才能の塊』である影山と比べた時、及川は優等ではあるが天才ではない。
それでも断言出来る。

今の段階でセッターとして優れているのは
及川であると。



「_____あ、烏野





セッター替わる」


29.8.31

[ 20/38 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -