叩くなら 折れるまで
烏野 vs 青城 サーブ降順
BR 北来MB(西谷Li)/花巻貴大WS
FR 影山S/松川一静MB
FC 田中WS/及川徹S
FL 日向MB/岩泉一WS
BL 澤村WS/金田一勇太郎MB(渡親次Li)
BC 東峰WS/国見英WS
「_____お手本を見せようか」
来た 及川のサーブ・・・!
サービスエースを頻発できる選手、特に及川さんのような人たちにとって、まず初めに狙いたいのは____
西谷!!!
速、 すげえドライブ、 でも正面、
い や
曲がる
どぱっ!!
「おおお!及川のサーブあげた!」
「やっぱ烏野のリベロすげえ!」
「西谷ないっレシーブ!!」
「何がお手本だ!普通に拾われてんじゃねえか!」
「ウヘヘ」
自分のサーブコントロールに自信がある、ボールをあげて、自分も飛んで、狙いを定められる。空中での軌道修正もできる。リベロが取れない、そう分かった時のチームにかかる負担。
あの人が狙ったのは、絶対に夕だ。
「俺、中坊の時あのサーブとったことあるわ。青城の一番の」
青城1回目のタイムアウトの時。西谷は北来と田中に言った。
「夕、いい加減覚えろ及川さんな」
「確かに入ればすごいサーブだったけど、結構ミスしてたしあんなコントロールもなかった。
相当練習したんだろうな。
___『一人サーブがすごい奴がいる』とか『セッターが万能』とか、それだけでずっと4強にいられるとは思えねえ。
気い抜いたら持ってかれる。
気張るぜ」
「「おうよ」」
「及川ナイッサー!」
やばい、また及川さんのサーブだ。あの人にサーブ順が回ってくる時、必ず俺は後衛、夕と交代してコート外にいる。
取れる自信がめちゃくちゃあるわけじゃねえ。だけど、俺だって中学の頃からあの人の打ち方を見て来た。
県選抜メンバーになった時、チームメイトとしてフォームの形を間近で見たこともある。
チーム内で及川さんのサーブを取れるのは多分、夕と影山。
そんなの及川さんにとっちゃ分かり切ってる話だ。意地の悪いあの人が次に狙うのは____
龍。
『叩くなら 折れるまで』
サーブレシーブの連続ミスは相当なプレッシャーになる。まずは元気な坊主くんを静かにさせて
次はエース。攻撃の要のレフト二人が折れれば___あ、まだいたか。厄介なの。北来陽。
あいつはどうせ俺の周りの時にゃリベロくんに代わるか。安パイだな。
全部折れば_____あの優秀な囮も意味を成さない。
何度も、執拗に龍を狙う及川さんのサーブ。一向に俺はコートには入れない。声かけと___あと気合を送る?くらいしか。
せっかくあげたのもダイレクトに岩泉さんに返された。次の一本も日向がつないだとこまではよかった、けど最後の一本、龍がブロックにドシャットを食らう。
ああ。出たい。俺なら、龍のをつないで決めてやる。正直経験がものを言う。日向じゃなくて、俺が___
「陽。拗ねんな、ばか」
「スガさん__?」
「俺ならやってやるのに、とか思ってんでしょ?
_______信じな?田中を。コートにいる奴らを。
自分本位にゲームを進められるわけないんだから」
「す、すみません___」
・・・・忘れてた。スガさんはスターティングメンバーに入れなかった。
一年セッターに三年間積み上げたモン全部譲って__ここにいるんだ。
なのに、俺ってやつは。自分んことでいっぱいだ。情けない。
二度目のタイムアウト。龍が、こっちに帰ってくる。WSが唯一コートから出て、気持ちを切り替えれる場所、だと思ってる。俺は。龍になんか声かけ、
「りゅ_「ふんぬアアア!!!!!」
「えっ!?
_____________っっ!」
「すんませんっした!!!」
「龍!しょうがないこともあんだろ!今のトスはむずかったし三枚ブロックだったし、俺もフォロー・・「俺!」
「今、トス呼ばなかった!!!!
一瞬ビビったんだチクショー!!!!」
「龍・・・」
「後悔は試合終わってからクソほどする!!
対して取り柄もねえ俺が!
てめえのミスに勝手に凹んで足引っ張ってちゃどうしようもねえ!!!
次は決めますッッ!!!!」
「わはは!今、それを言えることが十分取り得だ!!」
「___あ、うす」
「おい、照れてんじゃねえよ」
「なんでちょっと泣きそうなの陽」
「コイツの男気に感動したんス」
「全然上がってないわけじゃないんだ。大きく弾きさえしなければ誰かがカバーできる!コートには6人もいるんだからよ!
腕だけで取ろうとすると弾かれるから足動かせよ!」
「ウス!」
「旭さんも龍みたいになるといいですよ!!!」
「できたらやってるよ!けどそんな簡単なことじゃないから!」
「____だよな。
強烈なサーブ狙われて、その上ドシャット食らって。いつものテンション保ってるってすごいと思うよ」
次も、及川さんのサーブから始まる。
「おい!龍!
俺たちは一年だ」
「____は?」
ピッ!
「さっ来おおおおい!!!」
ギュルッッッッ
__________曲がる
「入ったばっかで、高校のジャージもまだ襟がカッチカチで、右も左もわからなくて、
自分が今までやってきたバレーも通用するか不安で、一つのミスも怖くて、同級生に抜かされるのとかめちゃくちゃイヤで______
そうだ・・!初めて旭さんの強烈サーブを受けた時のこと思い出せ!」
「おっ、おう・・・」
「ガムシャラやってた頃の俺たちを__思い出せ!!!」
ドッフッッッッ!
「んっグッッ」
「胸で受け止めた!?」
______クッソ、落ち、
ボッッ
「日向!!!」
奇跡的・・・いや、あいつらの実力だ!!
日向が拾ったボールを影山が返した。青城の花巻にボールが渡り、また帰ってくる。
大丈夫。後ろには夕がいる。そんで_____
「レエエエ フトオオオ!!!!」
龍がいる!!!
普段からミスが少ないわけじゃない
すぐ挑発にのっちまったりする
でも
東峰につぐチームNO.2のパワーと
なにより
崖っぷちに追い込まれた時に
パフォーマンスを落とさないメンタルの強さ
紛れもない
エ ー ス の 資 質
ドッッッッ!!
「お!烏野のボーズ!自分でっ・・・
及川に持ってかれた流れ
切った!!!!!」
29.8.30
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