己の居場所

最終日に音駒高校との練習試合を控えたGW合宿。初日。
学校の通常授業を終え、更には午後練も終え、日向達は烏野の合宿専用施設に来た。

「うぉぉおおおおおおお!!!」
「お前、ちょっと落ち着け」
「だって!合宿って初めてだし!」
「一日中むさ苦しい連中と顔つきあわせて何が楽しいのさ」
「おい月島てめえ!半径500m以内に潔子さんがいる空間はむさ苦しくねえんだよ!!」
「この奥羽山脈の源泉のように、清くすんだ爽やかな空気が分からないとは何てかわいそうな___」

「清水は家近いから用事終わったら帰っちゃうよ。いつもそうじゃん」

「潔子さぁぁん!家までお送りしまぁぁす!!」
「コラ待て陽!抜け駆けすんじゃねぇ!」
「オメーは彼女候補とLINEでもしとけコラ!!」








「次風呂1年だぞ〜。アレ、日向どうした?」

風呂上がり。さして髪を乾かす必要も無い田中はフラフラと自販機へ来た。

「・・・知らない人がいるんです。この建物の中。
しっ、しかも、1人じゃなくて、沢山」
「ええ?そんな訳ないだろ。今日ここ使ってんのは__」
「なんか、巨人と・・・小人」
「み、見間違いだぜ。窓に映った自分とかに決まってるじゃねぇか」
「そう!ですよね・・・見間違い、ですよね」
「そうそう。見間違い・・・見間違い」


夜に吹く怪しい風。
ドス、ドス。聞こえてくる、大きな足音と小さな足音のふたつ。





「「でっ、でたぁぁぁあああああ!!!」」




「あ?」

「何騒いでんだお前ら。大地さんに怒られるぞ」

「なんだよ、巨人と小人って陽とノヤじゃねえか!」
「オイ誰が巨人だ?」「小人って何だ」
「えっ、でも、ノヤさん、

ノヤさんの身長が縮んだぁぁぁあ!!!」

いつもは10cm分髪を持ってるせいでまぁそこそこ中くらいの身長には見えていたが、風呂上がりのペシャンコノヤはありのまま、159cmだった。

「ぶっ!だはははは!」
「確かにお前は髪の分まで身長だぜ!」
「龍!陽!おめーら笑ってんじゃねぇ!!

_____ん?」

その時。西谷の肩に置かれる少し冷たい手。

「____あんまり騒ぐな。大地に怒られ__
「「「「ぎぃやぁぁぁぁあああああ!!!」」」」
「えぇ!?俺だよ、旭だよ!」


「お前ら!うるさぁぁぁぁぁぁい!」













そうして、音駒高校との練習試合前日の夜。



「スターティングはこれで行く」


位置 ポジション名/氏名/背番号

BR S/影山飛雄/10
FR WS/田中龍之介/6
FC MB/日向翔陽/11
FL WS/澤村大地/1
BL WS/東峰旭/3
BC MB/北来陽/4 L/西谷夕/5




「旭さん」

ミーティング終わり。モップをかけ始める1年2年を差し置いて、西谷と北来は東峰に話しかけた。

「スガさんのことはともかく、縁下に申し訳ないとか思ってんじゃないすか」
「うっ」
「ええ!?」
「___仲良しごっこやってんじゃないんスからね

強い方がコートに立つ!これ当然です!!」

「あ、えーと。俺ずっとひたむきにやってきた訳じゃないです。一度逃げ出したこともあったし。だから」
「心身共にエースより強くなったら正々堂々旭さんからレギュラー奪いますよ!!なあ力!!」
「俺もいるって忘れんなよ、力・・・」
「ええ!?そこまで言って無、」
「ああでもその前にレギュラー奪われるとしたら先に龍か!ポジション的に!」
「上等だ縁下コラァ!!かかってこいやぁ!!」
「西谷もういいからやめろってば!」
「アガッ!」




そして、解散前にユニフォームが配られた。
1ヶ月以上は手にしていなかった。早く、これでもう一度。試合がしたい。

「なんだ陽。おい、泣くのか?泣くのか?」
「泣かねぇよ」
「ふは!なんかすごい久々だもんな。お前と同じコートに立つの!」
「ああ」




「_____夕。強いやつがコートに立つ、って言ったよな?」
「あ?」
「ウカウカしてっと、奪われるぞ。リベロの座」
「誰にだ?」

「____この、俺に!!!」


「はあ!?何でだよ?お前は明らかにコートに必要なミドルブロッカーじゃねぇか。
リベロに転向しなくてもお前の居場所は____」

「違う。リベロがお前ひとりだからって、油断すんなよ!
音駒のリベロ、夜久さんってひと。強いぜ」

「ああ。もちろん負ける気はねぇよ!」

「なら良い!
まあ、お前がリベロとして使えなくなってきたら、俺がやるけどな!

烏養コォォォォチ!俺リベロもできるんで!!!」

「烏養コォォォォチ!俺スパイカーもできます!!!」

「なんだお前ら!頼もしいな!
まずは明日の音駒戦。頼んだぞーお前ら」

「「うす!!任せてくださいよ!!」」



「最近は日向と影山にビビってたとこあるけど、
俺らの上にはもっと強い奴らが山ほどいる!!」

「だな!あと1年半。全部ぶっ倒してやろうぜ!」

「お前ら、アドレナリン出しすぎると今日寝れないぞー」
「しゃぁぁあ!一番に寝る!」
「あ!陽さーん!俺も俺も!」
「日向足はやっ!」
「てめぇらぁぁあ!勝負だぜ!」




「_______」
「どうしたんですか?烏養君」
「スパイカー陣も、競争が激しくなるなぁ、と思ってよ。

圧倒的エース東峰に、ダントツの身長をもつ万能手北来、ピンチに強い次期エース候補田中、チームを盛り上げるキャプテン澤村。
奴らの後ろには神業速攻を使う日向と、チームで2番目にタッパある月島もいる。
日向と月島のレシーブがまだ成ってねえ以上、これから見て判断するつもりだが、場合によっては___」
「__?」



「キャプテンを下げることになるかもな」




29.8.27

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