5死に後れども

「リヴァイ、まだ落ち込んでます?

あなたはこの前の初陣で、生きて帰るどころか何体も討伐したんだから、少しくらい調子に乗っても良いのに。」
ほら、彼らの話が聞こえるでしょ?あなたのことで持ち切りだ。そうレアは周りの兵士らを指す。
「ああ、確かに聞こえている。さっきからガヤガヤとうるせぇ連中だ。」
「・・・リヴァイ、あなたは英雄だ。そんな英雄にないがしろにされて、彼らは可哀想ですね。」
奴らの羨望の眼差しを一番ないがしろにしているのはお前だろ、レア。お前はまだ大して生きてもねぇくせに。死地に立ちすぎるとそうなんのか。リヴァイは気の毒だと思った。

今回の壁外調査の件について、聞こえる噂は数しれない。
中途編入のくせして、リヴァイという奴の実力は最高クラスらしい。あいつ、どこから来たんだ?元は何をしてたんだ?
うるせえ。人のことネタにして何が楽しい?リヴァイはその噂好きの連中を殴ろうかと何度も思った。

しかしファーランやイザベルが死んでから、彼はあることを決めたのだ。そのために、できるだけ周りとの軋轢を生まないよう心がける。己を堪えさせ、堪えさせた結果が、
「・・・今のリヴァイは火を噴く直前の大砲ですね。」
「まあな。
最近は、クソするのも楽しいと思えない。」
「それは大問題。リヴァイはクソを愛してやまないのに。」
「別にそういう訳じゃない。」
「しかし入団早々から人気のあなたなら、誰かしらに便秘薬を貸してもらえませんでした?そしたら少しは便所も楽しく___」
「例えだ。案外しつこいなお前。

お前が俗な話も好きだと知れば皆は残念がるだろうな。なんせお前は孤高の英雄__「リヴァイ。」
「あ?」
「私、もう行きます。」
呆気に取られた。突然会話を中断してレアが去ろうと立ち上がったからだ。しかし、リヴァイは止めなかった。この場にとどまりたくない、その意思表明だけで充分だった。
それは“聞くに値しない”のか、それとも私的な感情を併せ“聞きたくない”のか。レアの去り際の表情からして、明らかに後者だ。

仲間を連れ帰還した英雄、レア・ロンバルド分隊長。

確かに奇妙な話だった。なぜ仲間を連れ帰るだけで噂になるのか。英雄として当然のことだろ。
もしかして、あいつは仲間を連れ帰ることが滅多にねぇかのか。の癖に英雄と呼ばれている。英雄なのに本当は弱い。だから、そう噂されることをよく思っていない。
いや、それなら、なぜ___
あいつは英雄と呼ばれてる?
仲間も救えないくせに、一体どんな偉業を成し遂げることができた?

「まさか!あのこわーいリヴァイがそんなこと聞きに来るなんて!
何、レアのこと好きになっちゃった?」
「・・・違う。」
「いやあ、春だねぇ〜〜。」
「猛暑だ。」
ハンジの鬱陶しさに苛立つ。俺は聞く相手を間違えた。次はもっと真っ当に話せる相手に__
「ちょ、ちょちょっと待って!リヴァイ!今教えるから!」
「あ?」
「長くなるけどいい?レアの話をする時は、巨人の話も踏まえないといけないから__」
「はあ、教えるなら早くそうと言え。次いでにお前の話も聞いてやろう。」
「ホント!!?リヴァイありがとう!ささ!ここ座って!!」
ハンジのことは話に聞いていた。いやしかし、ここまで話が長いとは誰も思わないだろう。
俺はなぜ一番にあいつに聞こうと思ったのか。レアと談笑しているところを見たからか。
しかしハンジは俺と同じ平兵士で、俺の方が年上だ。奴は俺より何も偉くない。消耗品と言われる兵士の中では少し長生き、ただそれだけなのだ。奴の敬うポイントは。
ただそれだけなのに、なぜ律儀に夜が明けるまで耳を傾け続けたのか。

翌日は朝早くから立体機動装置の点検や訓練が行われた。
普段からきちんと睡眠をとるリヴァイが、そのせいで訓練中に怪我をしたことは彼にとって恥であった。木の幹に右脛を擦り、火傷したのだ。同じ班の仲間は察して気を遣ってくれた、しかしその分隊長、レアに関しては別であった。
「あれ。どうしました?その足。」
「少し擦りむいた。」
「へえ、少しですか。私からすれば、脛をどこかに擦って火傷したように見えなくもありませんが。
__まあ、いいと思いますよ。兵士の傷って恰好いいですよね。」
「てめぇ本当に嫌味な奴だな。」
「不注意が過ぎますよ。昨日、しっかり寝ました?あ________もしや。
全くあなたは・・・軽蔑しますよ。」
「勝手に勘繰るな。昨日はハンジの話で夜を明かしちまった。最悪なことにな。」
「はは。そうだったんですか。」
「何がおかしい?」
「リヴァイもそろそろ捕まる頃だと思ってたので。」
「忠告もせずに楽しんで見てたのか・・・。」
「避けては通れない道です。お疲れ様です。」
彼女の態度は相変わらず飄々としている。その癖してリヴァイを年上だと見極め敬語を使うところが、また憎らしいだろう。

「あ、それと。リヴァイ。」

「前回の壁外調査をうけて、隊の再編成が行われました。これに目を通してください。」
リヴァイはレアに突き出された紙を受け取り目を通した。あの巨人に目がないメガネ女は分隊長となった。そして、リヴァイはレアの分隊、しかも彼女直属の班へ配属された。
「・・・・・これは、」
「リヴァイ。あなたには協調性を学んで貰わなければなりません。あなたの仲良しも生憎、もういませんし。これは友達を作るチャンスだと思って。

どのくらい頑張れば良いかというと、そうですね、頑固者の私と仲良くなったら及第点を与えます。
巨人を討伐したのですから、楽勝でしょう?」
「だが・・・。」

「何も心配はいりませんよ。




死にたいと思っても一筋縄にはいかないのは私も同じです。
死に後れ同士、仲良くやりましょう。」






29.7.4



戻る 進む
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -