くろあか | ナノ

 序章 突然




「(暖かい…)」
「(わたしはさっきまで…お母さんとお父さんと…)」
「(あれ、どうしたん、だっけ…)」


視界は暗く、周りは暖かいが
身動きが全く取れない。

頭にもやがかかったように
意識がはっきりしない。

「(体…痛い…)」

心なしか体がギシギシと痛む。
腕も、足も痺れたように動かない。

「なに…」
「…ゆあ…っ」
「お、かあ…さん…?」
「よか、た…無事みたい、ね」

暗い空間に響く母親の声。
すごく近くから聞こえてきて微かに目を開くと薄明かりの中、お母さんの顔がすぐそばにあった。少し遅れて抱きしめられていると気がついた。


「おかあ、さん…なに?どしたの?」
「無事で、よかった…」
「なにが、ねえ…」
「ゆあ…よく聞いてね」
「?」
「ゆあ…ごめんね」
「!なん…で謝るの…」
「お父さんもお母さんもあなたになにもしてあげれなかった」
「そんな…そんなこと…」

お母さんの瞳から涙がこぼれ落ちる。

お母さんが。泣いている。

お父さんとケンカしてるときも
お仕事大変なときもいつもいつも
にこにこ笑顔で笑ってたおかあさんが


「泣かないで…お母さん…」
「ゆあ…よく聞いてね…」
「…な、に」
「お父さんもお母さんもゆあ…のこと、大好きよ」
「おか、あ…さん」
「だからね、ゆあ…には生きていてほしいの」
「なに、わかんない…」
「寂しいし辛いかもしれない」
「やだ…なに、いやだよう」
「でも、大丈夫。あなたにはわたしがついてる」


お母さん!
と叫ぶ前に声が光にかき消されて
目の前がいきなり真っ白になる。


「―っ?」

突然の眩しさに目を閉じた。

暖かい光

それに身を任せるように
ゆっくりと意識が遠のいていった…。



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