くろあか | ナノ

 二十九話 マイナス



プラスとマイナス
惹き寄せる力

マイナスとプラス
それは結局マイナスにしかならない



「団長ただいまー」
「シャル情報は?」
「はいはいこれ」

団長に資料を渡す。さっそくぺら、とめくって読み出した。今日『アンブレラ』で手に入れた情報だ。仕事のことは自分だけでも十分に調べられる。情報収集は自分の役目だから。

今日手に入れた情報は仕事とは全く関係のないことだった。

「…これだけ、か」
「うん。あの人もそれが限界だったみたい。」
「あの『世界領域-ネットワークマスタ-』でも、か」
「俺も調べてみたけど、ほとんど同じような情報しか手に入れられなかったよ」
「…ふむ」

それきり黙り込んでしまう。その情報とはマフィアでもない。お宝でもない。ただ一人の人間の情報だった。

「団長会ったことあるんだっけ?」
「ん?ああ、いや。去年『空間の奇術師』あいつのホテルの前ですれ違った程度だ。」
「の割にはこだわるねぇ」
「単なる興味だ」
「…ゆあちゃん普通の子だと思うけどなー」
「普通だったらあの女が雇わないだろう」
「まあ、そうだけどさー」

調べているのはモアさんの店でバイトをしているゆあという一人の少女のことだった。久しぶりに情報屋『アンブレラ』を訪れると可愛らしい女の子がバイトをしていて興味本位で名前を聞いた。

それをなんとなく「今日店で可愛い女の子みつけてさ〜」なんてメンバーに話していたら反応を示したのは団長で。

『世界領域-ネットワークマスタ-』モアさんは情報屋だ。世界のありとあらゆる情報を知りそれを誰であろうと金さえだせば売る。モアさんのもとでバイトをしているなんて同業者か、念能力者かどちらかだろう。と、言われ調べてみると全く情報がでてこなかった。

調べてみても戸籍がまず、ない。生年月日も出身地も住所も血液型も病院での治療や入院の履歴も調べたがそれもいっさい出てこなかった。

それは俺たちも同じけど。でも同じだからこそ不思議に思った。俺たちは流星街の生まれだから戸籍もない。ゆあもそうなのかと調べてみたけどここ最近ゆあぐらいの年齢の女の子が流星街を出入りした形跡はなかった。確かにそれは不自然だった。

「きっと何かあるだろ」
「うーん…そうかなぁ」
「団長、まだやってんのか?」
「ああ」
「そんな女どうでもいいよ」

フィンクスとフェイタンが部屋に入ってくる。手には盗んできたであろう食料や財布、大量の服が入った紙袋を持っている。

「面白い能力を持っているかもしれない」
「…団長が絶を気づかなかったんだっけ?」
「ああ」
「珍しいね」
「そんな風には見えないけどなー」

フェイタンもその言葉には反応する。確かに団長は強い。絶をされていたとしても気づかないことなんてそうそうないだろう。

「こちらから接触するしかないな」
「え?!ゆあちゃん仲間に入れるの?!」
「実力とそれほどの能力があればな」
「ただの女なんだろ?」
「女弱い。いらないよ。」

俺もフィンクスもフェイタンもその言葉には驚いた。団長はいまだに資料に目を落としている。三人で目を見合わせる。

「……恋?」
「いやいや団長に限ってんなことねぇだろ…」
「団長女使い捨てよ」
「だよねー」
「…聞こえてるぞ」

だってさぁ…と曖昧に笑う。お宝ならまだしも相手が女の子だし。まあ、団長が調べろ。というなら調べるし、仲間に入れる。というならそれには従うけど。

「ま、先にひと仕事終わってからだろ?団長」
「ああ、もちろんだ」
「マチとパクはもう街についてるみたいだよ」
「女は買い物好きね」
「あーそれでその荷物?」

フェイタンが持っていた服が大量に入った紙袋を指差す。おおかた二人の買い物の荷物持ちにされて耐えられなくなって先に帰ってきたのだろう。

「二週間後の今日に決行する。」
「今回は大物だからねー」
「久々暴れられるね」
「ノブナガとウボォーはまだ来てねぇのか?」
「あいつらは他で暴れてるらしい」
「はあ、好きだねぇ…」

久しぶりの全員集合命令だった。いつもはバラバラに好き勝手しているが団長の命令があれば集まって命令を遂行する。

「下調べは?」
「うん。もうほとんど終わってるよー」
「そうか」
「その前に一仕事だろ?」
「ああ…フィンクスとフェイは明後日、俺と美術館を襲う。」
「了解」
「楽しみね」
「シャルはそのまま『アンブレラ』に通え。ゆあから目を離すな」
「…はいはい」

まあ、予想通りの命令。別にゆあちゃん可愛いからいいけど。団長に目をつけられるなんてかわいそうだなぁ…とにこにこと働くゆあの姿を思い出した。



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