「くしゅ!くしゅん!」
「おーおーゆあ風邪かあ?」
「ずび…いえ、大丈夫です」
「誰かが噂してるかもね」
「…ヒソカさん、じゃないですかね?」
キッチンに入って鼻をかむ。わたしの噂をするのなんてヒソカさんぐらいしか思い当たらない。…バカとか言ってそう。
「今日はもう帰りな」
「え!まだ大丈夫ですよ!」
「もう店も暇だしなー」
「…あはは」
お昼のピークが終わってしまい店の中は静かになっていた。もともとそんなに目立つ場所にある喫茶店ではないのもあるけど…。
「ほら、今月分の給料」
「ありがとうございます!」
モアさんから封筒を渡される。あんまり働けてないけどそれでもこうやって給料として働いた分をお金でもらうとなんだか達成感があって好きだった。
ヒソカさんとする殺しのお仕事とはちがう達成感や満足感にじーん、と感動しながらお金の入った封筒を握りしめた。
「ま、明日も来るならよろしく」
「はーい。バラバラなシフトで申し訳ないです…」
「こっちは来てくれるだけで助かるからいいのよ」
そういってくれるとわたしも助かる。このお給料で何をしようかな。もう一つの仕事のお金はヒソカさんがゆあの取り分。と言ってくれるんだけどそれは丁重にお断りしていた。
殺しで稼いだお金が嫌、とかじゃない。わたしが勝手にヒソカさんの仕事を手伝っているにすぎないんだからお金は受け取れない。
自分でちゃんとハンターになってお金を稼げるようになってからきちんとヒソカさんにお金も返していく。それだけは決めていることだった。
「何買おうかなあ…」
「服とか買ったら?これからまた寒くなるわよ」
「んーでも自分のためだけに使うのも…なんか」
「自分で稼いだお金なんだからいいでしょ」
「そうですけどー」
もちろん服とか本とか好きなものは買ったりするけど…あ、そうだ。ひとつ買いたいものがみつかった。
「明日も来れたらお昼前に来ますね!」
「ん。早く携帯買いなさいね」
「…そうですね」
わたしだって欲しいけどね!ヒソカさんが買ってくれないんだもん。お願いはしてあるしとりあえず曖昧に笑っておく。
「じゃあお先に失礼します」
「はいはいおつかれ〜」
手だけをひらひらと振ってすでにモアさんは手元の本に目を落としている。ぺこり、とお辞儀をすると喫茶店をあとにした。
お給料が入ったら、
やっぱり買い物するよね!
「(ひとつくらい…わたしからお返ししたい)」
家には帰らずにもらった給料を持ってそのまま街へと向かった。