くろあか | ナノ

 十九話 冷静



銃声。罵声。怒声。
屍。赤い赤い、一面、赤い。

こんな怖い状況なのに
落ち着いている自分がいて

そんな自分が一番怖かった。



イルミさんが入ってから10分。わたしもビルへと向かう。絶はもちろん行ったままでなるべくみつかないようにビルに近づいた。

「…まだやってるなあ」

ビルに近づくとまだ銃声や罵声が響いていた。入口で中を伺う。たくさんの人が倒れていた。あたり一面の人。血。赤。

「う…」

さすがに耐えられなくてすぐに目線を外した。非常階段を探す。エレベーターの近くに扉をみつけた。耳を澄ませて円をはる。

…どうやらこの階はもう生きてる人はいないようだ。少し円の範囲を上げると上の方で人の動く気配を感じた。

「(…よし)」

銃をホルスターから外して構えた。安全装置を外して扉を少しだけ開ける。向こう側に人の気配はないので素早く階段へと出た。空気が冷たくて静けさも相まって気持ち悪い。

「(できれば上まで誰にも遭遇しないといいけど…)」

イルミさんが下の階から制圧してくれている。それでも全部片付けるのは無理だろう。静かに階段をのぼる。6階、7階と何事もなかった。

「(順調だけど…)」

7階まで上った踊り場で一度立ち止まった。いる。…3人、かな。たぶん8階の踊り場。人の気配がする。

「おい!状況は?!」
「5階も全滅したらしいぞ!」
「なに?!敵は何人いる?!」
「それが…今のところ一人しか確認できてないらしい」
「はあ?!一人にここまでやられるか?!」

円をしているから大体のイルミさんの位置は把握していたがすでに5階まで全滅させているらしい。

「(さすが…イルミさん)」

3人の声の雰囲気からしてだいぶ翻弄されて焦っているみたいだった。ヒソカさんのところに人を送っている状態での奇襲。成功したみたい。とりあえず一安心した。銃を構える。上にあがるためには殺さなくては。

気持ちを切り替える。イルミさんのように無表情、無感情を意識した。足に念をこめる。脚力を強化して一気に8階の踊り場まで駆け上がった。3人の姿を捉えて銃で狙い撃つ。

「誰だっ」
「なっ?!」
「ぐあ!」

―パァン パァン パァン!

ドサドサドサ…

「………」

見事に命中して倒れる男たち。それをなんとなく見下ろす。動かない。死んだんだ。

わたしが殺した。いま、命を奪った。

驚く程に冷静でいられて動揺することも躊躇もしなかった。頭を狙ったし、ちゃんと命中している。得体の知れない寒気が背中をぞわり、と撫でた。

「………」

時間にそこまで余裕があるわけでもない。倒れて動かなくなった男たちから目線を外すと再び上へとのぼった。



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