「(ここ、か)」
最上階。階段の扉を開ける。円で確認するが部屋の中に数人の気配を感じた。
「(それ以外は、反応なし)」
フロアにでると部屋がひとつだけあった。厳重で重そうな扉。たぶんあそこにターゲットがいる。
銃の弾数を確認するとあと3発だった。たぶん、6人。そのどれかがターゲットだろう。ナイフを一度確認した。外さなければ銃で3人。あとはナイフだけでも十分だろう。
「(……よし)」
扉の前に立つ。深呼吸をひとつして、銃を握った。パーカーのフードを被って顔を隠す。
―コンコン、 「誰だ!」
扉をノックすると中から男の声。そのまま静かに待つ。扉が開けばその瞬間に撃つ。開かなければ念で殴って扉を壊す。
―ガチャッ
「おい、誰だ!」
扉が開く。男が顔を出した瞬間、撃った。
―パァン!
「なんだ!?」
「どうした?!」
銃声に驚いて2人でてくる。
それも冷静に狙って撃つ。
「ぎゃあ!」
「ぐああぁっ」
しっかりと急所に命中する。鈍い声と同時に倒れて血だまりができる。騒がしくなるまわりとは裏腹にすーっと神経が澄んでいく。
「(案外あっけない…)」
倒れた男たちを一瞥する。気は緩めずに開いた扉から中へと侵入した。
「誰だ!?」
「貴様が侵入者か!」
「………」
牽制のつもりで銃を構える。弾はすべて使いきったので空だ。ナイフをすぐに出せるように留め金だけ外しておく。中には銃を構えた黒い服の柄が悪い男が2人。椅子に座ったままのスーツの男が一人。たぶんそれがターゲットのマルドだろう。
「…どこのマフィアだ!」
「………」
「仲間は何人いる!」
「………」
罵声を浴びせられるが答えない。しびれを切らして男の一人がこちらへと近寄ってきた。その隙を見逃さず一気に間合いを詰める。
―ヒュッ 「ひっぎゃあ!」
銃を投げ捨ててナイフで男の喉元を切り裂いた。もうひとりが動く前にターゲットのマルドへと近寄る。
「ひぃいい!?」
「ぐぅっ…!」
ナイフで切り裂くよりも早くマルドはもうひとりの男を自分の前へと引っ張る。マルドを切り裂くはずだったナイフは盾になるようにでてきた男の胸元に突き刺さる。
「!」
「っ…ひぃいい」
その間にマルドは部屋の隅へと逃げた。この人…いま、仲間を盾に…っ!動かなくなった男からナイフを抜く。血がぶしゅ、と吹き出して少し顔にかかった。…すごく気持ち悪い。