05
「ア゛ー!ダー!!ヴアァァァアアァ!!」
奇声(寧ろ雄叫び)を上げながら高速はいはいで部屋中を徘徊し、たまに転がったり壁に飛び付いたり。
そんなベティの暴れっぷりを、小人さん達はビクビクしながら見ている。
………おっと、眺めている場合ではない。あれを取りに行かないと。
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「わわわわわわWhat is it!?」
「な、南蛮ごのそっそっ某にはわからんでござりませう!?」
「おまっ、お前も大概だぞささ、真田!!」
下を見ては何かに脅え上ずった声で会話する奴等と、時折聞こえる奇声。何とも煩い。
止めろ、頭蓋に反響する……。
一体下で何が起こっているというのだ…。
「貴様ら、煩い、ぞ…頭蓋に響く…」
「黙りんすぅぅぅ」
「Hey真田、またおかしくなってるぜ!!」
「お前も見といた方がいいぞ三成!!」
……何だというんだ。
そう思いつつも、言われるままに下を覗き込んだ。
「ア゛アァァァアアァ!!」
「…………」
何だあの生物は。
「紫音殿の幼馴染みの妹らしい」
「……あの女の幼馴染みは人間では無いのか」
「いやHumanらしい」
「南蛮語分かりませぅ!!」
「もう放っておこう。真田は。三成、あの幼子は間違いなく人間だぞ」
………あんな人間がいてたまるか。
「ベティ!くらいなさいっ!!」
その時、隣の部屋から現れた紫音(…だったか?)が、何かをその謎の生命体に投げ付けた。
そしてそれは、よく見ない内に謎の生命体に食い千切られた。
「「「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」」」
………五月蝿い。
+紫音side+
「そーれ」
「アブッ」
人形の首を食い千切ったベティの口におしゃぶりを突っ込む。おしゃぶりさえくわえていればベティは大人しく眠ってくれるのだ。
ベティが眠ったのを確認して、小人さんたちに呼び掛ける。
「ベティ寝たので、もう降りてきても大丈夫ですよー」
「むむむ無理だっ!!」
「大丈夫です。一度おしゃぶり口に入れれば2時間は起きませんから」
「そ、そうなのでござるか…ならば」
そうして、びくびくしながら降りてきた。……おーい、三成が置き去りになってるわよ。
「三成さーん、降りれます?」
「………問題、ない」
そうは言ったものの、やっぱ風邪でダルいらしい。下にあったクッションに顔から突っ込んでいた。
クッションに顔面着陸した三成をまたタオルの上に寝かせる。何故かさっきより顔色がいい気がする。動いてたのに。
残りの小人さんたちは、眠っているベティに興味津々。起きてるときはアレだけど、寝ているときはただの子供だもの。
「ベティは、人形とかの小さいものを食い千切っちゃうんですよ。多分あなた方なら真っ先に殺られてましたね」
「そんな命の危機に晒されてたのかワシら!……このままずっと眠っててくれれば可愛らしいんだがなぁ…」
「いっそこのまま永眠しろって事だな、わかるぜ」
「違うぞ!ワシそんな非道なことかんがえないからな!?」
なんだ、一瞬本気にしちゃったわ。それにしても、寝顔は可愛らしい。寝顔は。
でも起きる前にルイス来てくれると助かるのに。
………あー、喉乾いた。
「紫音殿?何処へ行くのでござるか?」
「ちょっと水飲むだけですよ」
そう言いながら、キッチンに向かった。冷蔵庫にジュース入ってるけど、乾きを潤すだけなら水道水で充分よね。
そうして、近くにあったコップに手を伸ばして―――動きを止めた。
何故ならば。
長い銀髪の小人さんが、某貞子の如く近くにあった水筒から出てきていたからだ。
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