疑心と不安と
「…ま、もかの決めた事なら、俺はあんま口出ししないし、ある程度は手伝ってあげるよ」
「ありがと久利夢君」
彼は昔から、私の決めたことに然程口を挟まないでいてくれるし、困ってる時も助けてくれた。久利夢君は何やかんやで優しいんだと勝手ながら思っている。
やれやれ、と言わんばかりに重そうな腰をあげ、ス、とその眼差しが子供達に向けられる。
「さ、ガキ共に説明するぞ」
「…それでは、それがしたちはかえれないのでござるか…?」
久利夢君がコクリと頷けば、あっという間に泣き出す弁丸君と弥三郎君、その二人を慰める宗兵衛君、平常ぶってはいるけど不安が全面に浮き出ている梵天丸君、不安と疑心とが入混じっているらしい松寿丸君。
久利夢君から話を聞いた彼らの反応は様々だけど、全体から感じ取ったのはやっぱり"不安"だった。
「う゛ぁぁぁぁっっ!!ちちう゛えぇぇぇっ!!」
「ふえぇぇん…ひっく、ひっく…」
「ほら、泣くなよ、男だろ?それにこのお姉ちゃん…もかちゃんが俺らの面倒見てくれるって言ってるしさ、な?」
「……われはきさまのほどこしなど受けとうないわ!どうせ裏があるに決まっておる!」
私の事をなんら疑わず受け入れてくれた宗兵衛君とは対照的に、松寿丸君は私への疑いでいっぱいなのが手にとるようにわかってくる。
そこに何かしらの理由があるのかはわからない。けれど、突然現れて自分達の世話をみる、なんて人間、簡単に信用できない気持ちもわかる気がした。
「…裏なんてないよ。私は君達と関わった以上、放っておけないだけなの。だから、ね?」
「うそを申すな!なにをたくらんでおる、はけ!さもなくば…」
「はい、そこまで。松寿丸、もかが信用できないって言うんなら、お前一人外に出ていけばいい。現代の常識も知らない身寄りのない生意気なガキ、なんて厄介なの、面倒見てくれる物好きそういないぜ?少なくとも俺なら孤児院に突き出すね」
「………っ」
「もか、やっぱ5人全員養う必要はないんじゃないの?金銭的にもアレだし、松寿丸みたいにもかに養われるのイヤって奴は孤児院の前に放りだしちまえば?」
「ダメだよ久利夢君。異世界から来た、なんて信じる人そういないし、事情話さずに引き取って貰っても、いつか帰った時に大事になっちゃうかもしれないじゃない。 ……それに、金銭的な方は何の問題もないよ。口座のお金全然使ってないもの」
あんなお金、使うのも見るのも嫌だけどね。 そう言えば、彼は微妙な表情をしながらも静かに頷いた。
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