■ パピー滞在決定
「……はい、後ろ暗い話はヤメヤメ!今話してたのは『私とパピーが本当に親子なのか』ってことでしょ?」
話の流れを変えるようにいつもの明るい声で言った佐和の言葉に、全員が頷いた。
もう一度、アルバムを見渡す。
七五三、とかいう物の写真だけじゃなく、海での写真でも草原での写真でも秀久は映り込んでいる。佐和が若いのと比例して秀久も若い。
TVでやっていた合成写真とかじゃなく、本当に昔からいたらしい。
……だが決定的だったのは、佐和が最も若い頃…つまり赤子の時のもの。
ぎこちない手つきで佐和を抱く秀久とその傍らで笑う佐和のお袋…佐知。
その姿は、誰がどう見ても親子そのものだった。
「みんな信じた?」
「…ああ」
「こんだけ決定的なの出されちゃ信じる以外ないよなー」
「あ、決定的ってならパピーとマミーの結婚写真が」
『それはいい』
佐和そっくりな佐知と松永そっくりな秀久との祝言の写真なんか見たくねぇよ。
「ふむ…これで一応の信用は得られたと考えてもいいのかね?」
「…はあ」
「気の抜けた返事だな…まぁいいのだがね。…それより佐和」
秀久は佐和へ向き直り、とんでもない爆弾を落とした。
「私は暫く日本に滞在するが、佐和は私が此方に滞在することと本家に滞在することとどちらがいい」
「……はぁ!?」と言ってやりたいのを全力で堪える。他の連中も同じようだ。
此方に、というのは恐らくこの家にstayするって事だ。冗談じゃねぇぞ!
四六時中松永がこの家にいるとか、俺らの気が持たね…
「こっちがいい!!」
「はっはっはっ、苛烈苛烈」
…だろうなー。
長年会ってなかった(しかも見た感じ相当なついてる)親父と一緒に過ごしたいってのは当たり前だ。
俺らが何か言える事じゃねぇ。
「……あっ、でも今ゴキちゃん部屋しか空いてない…」
「ゴキ…ああ、ごきかぶりか。何れ、蝿叩きと其れを寄越しなさい」
「…大丈夫?」
「その程度、己でどうにかせずして何とすると言うのだね」
そう言うと、秀久は二階の階段へ消えた。佐和も後を追うものだから、俺達も後を追った。
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