■ パピーと佐和の思い出





「…これは…!」



アルバムには、佐和の子供の頃の写真がありありと残っていた。


二歳程の佐和が向日葵畑の中で立っている写真、五歳程の佐和がiceを食ってる写真…当然と言っちゃあなんだが、猿がデレデレしてて気持ち悪い。


そして次のpageを捲った時、全員から「あ、」という声が洩れる。


他の写真より一際大きいそれには、振り袖を着た七歳程の佐和、モノクロのスーツに身を包んだ今より若い秀久、何故か傷だらけな十二歳程の瞬太郎、見たことのない爺さんと婆さん。


そして、純白のワンピースという服に身を包み、幸せそうに笑う────



『……佐和!?』



いや、そんなハズはねぇ。佐和はこっちのガキのハズだ。そもそも、左目下にあるはずの泣き黒子が右目下にある。


ならこれが…



「……この人が、私のお母さんだよ」


「…いやはや、改めて見ても…やはり佐和、卿は佐知に似てきたな」


「似てるどころじゃないよ…生き写しじゃんこれ…」



風来坊の言葉に、一様に頷く。


黒い髪、青みがかった目、アホみたいに頭頂部で一本だけくるりと丸まった毛…どこをとっても、##NAME1##と見分けがつかない。


ただ、違うのは雰囲気。佐和とは違い、どこか大人びていて儚げなそれと泣き黒子の位置だけが、佐和と彼女の違いを感じさせていた。



「これ七五三の時の写真だね、それも瞬ちゃんが来たばっかりの頃の」


「嗚呼。あの時は卿と佐知が彼を殆ど強引に連れてきて共に撮らせたのだったな。…今ではそれすらも懐かしい」


「…?懐かしい?ならこの佐知殿は…」


「うん、私が中学上がる頃に病気で死んじゃった。…あれからだったなぁ…じいちゃんが私に過保護になったの」


「玄三郎殿は佐知を大層気に入っていたからな…」


「…そうだったのか」



今まで一緒にいたのに、一欠片も知らなかった。いつも明るくて、馬鹿正直で危なっかしい佐和。そんな事情は微塵も見せなかったから。


勿論、佐和は無理をしているわけではなく、その悲しみや事情を克服したんだろう。…そんな佐和の強さに、ただただ憧れるばかりだ。


──俺はまだ、右目のことを引き摺っているのに。





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