「アヤノが自殺…?」
なんで、あの子が自殺をしなくちゃ、いけないの?
なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで
「染香ちゃんが気にすることはないわよ。彼女、お勉強ができなくって死んだって言うじゃない。染香ちゃんには無縁のものだわ。」
母親がアヤノの事を貶していく。
この人はアヤノの事を何も分かっていない。
アヤノのあたしの支えだった。
この息苦しい家でここまで生きれたのは彼女のおかげなのに
「あんな子といたら染香ちゃんの評価も下がっちゃうもの。さあ、これから先生がお見えになるわ。予習はしっかりやったのかしら?」
ついさっきまで連絡を取り合っていたのになんで急に自殺をするんだよ。
「アヤノ…」
「っ…!!!いいかげんにしなさい!!あなたはあの子と違って選ばれた子なの!!エリート高校に入って、エリート大学に入って、超有名な企業に就職するのよ!!!そのためにはエリートの子と関わらなきゃいけない!!あんな勉強の」
机に置かれている参考書や教科書を手にして、思いっきり母親に投げつけた。
甲高い悲鳴と共に母親が床へ倒れこみ、あたしは立ち上がってあの人を睨みつける
「ふざけんなよ…、アヤノのこと何も知らないくせに…!!アヤノは誰よりも優しくて素直で、あたしの大切な人なんだ!!!」
わなわなと母親が震え上がって大きく目を見開く
「わ、私は染香ちゃんのために言ってるのよ!!!勝ち組になるのはたったの3%で…!!!」
ぴんぽーん
家中に響き渡るインターフォンの音
母親は立ちあがって、あたしの部屋から出て行った
静まり返った部屋であたしは携帯を取り出した
『わたしね、がんばるよ!』
最後のメール文。
アヤノが自殺する前に送られたのか
何に対して頑張るのか分からないけど
「……っ…!!みんな!みんな狂ってしまえばいい…!!!こんな世界いらない!アヤノのいない世界なんて…!!!!あたしはいらない!!!」
真っ赤なマフラーを見つけて、黒いセーラ服を身にまとった彼女
携帯を握りしめて嗚咽をこらえながら涙がこぼれ落ちる。
「逃げて!!!染香ちゃん!」
ドタドタと慌ただしく階段を駆け上がってくる音と開かれる扉。
そこには血だらけの母親
なんで母親が血だらけなのかは分からない。
その後ろからは覆面をしてる大柄な大人たちが押し寄せてきた。
「……え…」
何が起きたんだろうか。
心臓部に突き刺さるサバイバルナイフ
引き抜かれると血が噴き出した。
朦朧とした意識の中で、母親も殺されるのが見えた。
覆面の人達は金ものを袋に詰め込んでいく
「やっぱ、金持ちはちげぇな!!!」
「しばらくは金に困らねぇぞ!」
ああ、狂ってる
『染香!』
アヤノ、寂しくないよ。
あたしもそっちに行くから。
いま、
「…あい、に…」
イクヨ
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