"いいか、必ず守り通すんだぞ"
"はい、とうさま!"

「待ってよ、真緒、さいぞー!」
「早くしないと日が暮れるよ」

いくぶん遠くにいる守るべき娘を振り返ってみる。
上質な衣服を身纏い、息を切らしながら後ろからやってくる。

「はやく幸村様のところに戻らないと心配かけるよ」
「うぅ…だってーあそこの団子屋がー…」

まだ名残惜しいのか、先ほど食べてきた団子屋が気になるようだ。

「幸村様に頼めばまたすぐに行けるよ。」

幸村様は伊佐那海のことを特別視してるからね。
なんて本人の前では言えないこと。

「じゃ、次はみんなと行こうね!絶対才蔵もだからね!」
「はぁ!?」

なんで俺もなんだよ!とぶーぶー文句を言う才蔵を無視して、いつもより上機嫌な伊佐那海に戻った。

どろりと、

また、

どろりと、

また彼だ。

醜いものが、

いつも、

ふつふつと、

一番に呼ぶその名は、

湧き上がる。

あたしじゃなかったの?

「真緒ー?真緒も疲れた?」
「え、ううん。忍である霧隠なんかより、私の方が役に立つなぁって思っただけ」

ふふっと笑いながら霧隠を一瞥すれば、すぐに啖呵切ってくる短気な彼

「大丈夫だよ、真緒!才蔵は強いもん!」

ほら、まただ。
また醜いあたしが顔を出してくる。
あたしだって伊佐那海が来てから、ずっと山に籠って修行をしてたのに、強くなってるはずなのに、どうして、こんなにも違うの。
ずっと毎日鍛錬も欠かさずやってるのに。

「あ!真緒は絶対だからね!!私と真緒はずっと一緒なんだから!!」

ねぇそんな満面な笑みで、あたしを見ないでよ、伊佐那海

「…伊佐那海、早く帰ろうか。」

パっと彼女から目線をそらして、手を掴み城下町を後にする。

お願い気づかないで
こんなに醜いあたしを

「伊佐那海、真緒、才蔵、おかえり」
「全く何時間ほっつき歩いてれば気がすむのよ」

一番じゃなくてもいいから、二番でもいいから傍にはいさせて
じゃないと、あたしのいる理由がないから
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