あの後、リンが案内すると言ってくれて一緒に歩いていた筈なのだが、いつの間にかリンとはぐれていた。
そう、無事に家に着いたときには、既に居なくなっていた。その事に気付かなかったユーゴは、「今日、助けて貰った奴を紹介するぜ!」と勢いよく言い、リンの姿を両親に見せようとしたが−−居なかった。
当たり前だが、「どうしたの?誰も居ないじゃん。」と言われる。慌てたユーゴは適当に誤魔化し、その場を凌いだ。
「(まあ、帰った……よな。)」
少し違和感はあったが、首を振り否定した。その姿を見ていたユーゴの両親は首を傾げたのは言うまででも無い。
夕食。
久しぶりの豪華な夕食だ。
「田舎の飯もウメーな!」
「もっと行儀よくしなさい。」
ピシッと注意されるが、ユーゴはお構いなしに笑顔で大量のご飯を食べている。
「近所の人が食材をくれたから、豪華なだけだよ。」
「じゃあ、明日からは貧相になるっていう事か!」
「コラッ!」
また、注意された。
都会に居たときには味わえなかった温かさが今ではあるのだろう。
リンはユーゴと自然に離れ、自宅に着いた。
街灯がない山道を歩いた先に在るのが、リンが住んでいる家だ。
蝋燭に火を着けば、辛うじて、廊下が見える。空では何やら黒い物体が飛んでいる。それを見上げ、リンは黄緑の髪を揺らし、奥へと入っていった。
「久しぶりの住民に興味があるのか?」
住民の一人がリンに訪ねる。その住民は、拾ってきた子供を寝かし付けている。
「……もう耳に入っていたのね。」
「当たり前だ。俺は毎日、新聞配達をするために山を降りているんだからな。」
「そうだったわね。そういえば、親友さんは?」
「また、下に降りて調査してるよ。」
「変な事にならなければ良いんだけど。目を付けられている限りは、せめて、あなたは大人しくしてね。」
リンは子供と一緒に眠りに着いた彼に対し、そっと微笑んだ。
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03