いろいろしょーせつ | ナノ
「テメェ!いつから?」

「それは、私の台詞よ!」

「考えてみたらそうだが、何か気に食わねえ!」

ムスッとした少女は、俺に手を差し出し「それは、立ち上がってから言いなさい。」と言われた。

渋々、手を掴み立ち上がり膝などに付いた砂を払った。

都市部だとこんなに砂なんか付かねえよ。

−−−
その後、日陰にある大きな石の上に二人は座った。

そして、少女は「長年この山奥に住んでいるリンよ。」と自己紹介をしてくれた。

明るい黄緑の髪が風に揺れている。日陰の具合と風が気持ち良い。

「俺はユーゴだ。都市部から引っ越してきたんだ。」

「……珍しいわね。」

何処か懐かしそうな声で、リンは遠くを見つめている様だ。

「笑うか?」

そんなリンを見て、別に嫌な気持ちにはならなかったが、ふと言ってしまった。

「何でよ?」

視線を俺に向け、少し驚いた声色だ。
まるで、『誤解しないでよ。』と言っているようだ。

「俺ら家族は格差に負けてここに来たんだぜ。出て行くとき、トップスが笑っていたんだ。だから……。」

「そんな事で笑ったら、住んでる場所を笑うことになるわ。」

出て行くときを思いだし俯く俺に、戻りたいの?とリンは聞いた。

「……分からねえ。まだ来て数日だし。」

「そう。やり直しはこれからよ、ユーゴ!」

『アイツ、田舎に引っ越すそうだぜ。』
『ははっ!戻って来れないだろ〜!』
俺らを笑う奴らの声が一瞬、脳裏に過った。
確かに、出来ればやり直しをしたい。

「そうだな!リン!」

ハイタッチをし、大きな音を鳴らす。

まるで、勝負が始まったかのように。

−−−
久しぶりに来た、新しい住民。
何故だか胸を弾ませた。



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