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その後もニーナはソファに腰を下ろしながらイワンコフとの会話を続けていた。

「看守達にも知られてないってことは、このスペースを作った人も囚人ってことになりますよね」
「ンフフ、そうよ。位置的にはLv 5とLv 6の間にあるわ。入口は幾つもあるけどね。そこから物資や情報を調達してるのよ。映像電伝虫も居るから、獄内情報も万全」
「なるほど。だから私の事も筒抜けって訳ですね」
「そう。貴方がここへ来てからの動きは把握している。でも解らないわね。貴方みたいな可愛いキャンディガールに、一体政府は何を求めてブルのかしら?」

インペルダウンなどという地獄に放り込んでおきながら、寛容な処置を望み10日という期限でまた解き放とうとする。
機嫌は損ねたくないが、掌握はしておきたい。そんな政府の本音がチラホラと伺える所業だ。

一体、こんな少女に、どんな事情があるというのか。

「革命軍幹部としては、政府の意向は気になりますか?」
「あらそう見えた。まあ、ヴァタ〜シの個人的興味も含まれてるわよ」
「フフフ、でもごめんなさい。それは秘密です。まあ立場を明かすなら、七武海と同じ権限を持った海賊。それが、ちょっとヤンチャしたのでお仕置き中ってとこですかね」
「あら、ヴァナタが七武海?ますます政府は何を考えてるのか謎が深まるバッキャブル」

そうは言うが、ニーナの話に相槌を打ちながらも、豪快に料理を平らげている最中のイワンコフは、そこまで気にしていなさそうだ。
まあニーナも、それ以上詮索されても答えに困る内容ではあるが。

「それにしても、ヴァナタもかなりの曲者ね。あのマゼランが署長室で処遇に困ってたわよ。どのフロアでも、貴方の扱いに十分とは言えなッシブルね」
「んーっ、そこまで困らせる積もりは無かったんですけどね。でも後から海軍に、ずっとLv2に居ました、なんて報告されたら、マゼランさんが怒られそうで」
「ンフフ、ヴァナタがそんなに健気だから、ヴァターシもマゼランの面白い顔が見れたブルよ。感謝するわ」
「はぁ、えっと……?」

マゼランの面白い顔とは一体。とニーナは首を傾げた。けれどイワンコフから答えが返ってくる様子は無い。まあそこまで気になる訳ではないし、そう大したことではないだろう、とニーナはまた一口紅茶を啜る。

すると、それまで横に控えていたイナズマが進み出て来た。

「失礼しますイワ様。どうやら、特別囚人の不在が露見したようです」
「あら、早かっティブルね。随分、可愛がられてるじゃない。ヴァナタ」

ニーナが抜け出したことがもうバレたらしい。随分と早い対応に、ニーナは苦笑いする。

「この地獄じゃ、あんまり嬉しいことじゃない気もしますけど。といっても、もう極寒地獄とはお別れみたいですね。さて、今度はどのフロアに送られることか」
「ンフフ、ヴァナタあんまりお転婆は感心しないよ。何せここは地獄。そこに戻るんなら、相応の拷問は覚悟しといた方がいいわ」
「アハハ。肝に命じておきます。それでは私はこれで。紅茶、ありがとうございました。あと素敵なショーも」

ソファから立ち上がり、ニーナはイナズマが示してくれている通路へ足を向ける。

「それでは、地獄に咲いた秘密の花園の住人方。迷える旅人はこれにて、退散致します。ここでの紅茶の味は夢幻と心得ますので、どうぞお健やかに」

画期的過ぎて呆気に取られたが、派手で華やかなショーのお返しとばかりに、芝居がかった台詞で丁寧に一礼して見せると、イワンコフが多少呆れたように首を振った。それを見届け、ニーナは笑顔で通路の奥へと消えて行った。
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