油断禁物(ダウト)




油断していた。
後ろはいつもあいつが守ってくれていたから。
疲れていたのかもしれない。
リグレ様が死んで仕事の量が増えてあまり休んでいなかったから。
後ろからの鋭い激痛に目を見開いて、口から大量の血を吐き出した。
自分の腹に目を落とすと、醜い蠢く肉塊が背中から腹を突き破って貫通していた。
脊髄が無理矢理引き離される感覚。痛みを通り越した鈍い感覚に目をただ見開いた。
自分の背後から別の肉塊が身体に纏わり付く。
触手の様な、異形だ。
いつの間に。
絡み付いて、捕食する様に突き破った腹に何本も無理矢理入ってくる。
内臓が、引きずり出される。血を吸ってみずみずしく触手が潤う。
そんな目の前の光景を、夢をみているかの様な他人事の様にただぼんやり見ていた。
酷く痛かった感覚も、不意に何も感じなくなった。
視界が霞んで、その先に誰かを見る。
あいつは、俺が死んだら、悲しむだろうか。
これくらい、大丈夫だから。
もう痛みもおさまったし、もう大丈夫。
視界に映る誰かに囁いた。
声なんて出なかった。血を吐き出すばかりで、一言も喋れ無かった。
今の視界も全部幻覚に違い無かった。
フェンネルやフレイヤは、リグレ様やアニスの代わりに一人で夜中に異形狩りなんてするからだと怒るだろうか。それとも笑うだろうか。
だって、今日の仕事だったんだ。
これが終われば休めるはずだったんだ。
今日は寒い。だから、…。
だから一人で落ち込むあいつと、また一緒に…。
元気出せって、言えば良いんだろうか。添い寝して頭撫でてやれば良いんだろうか。
分からない。分からなくて逃げていたのだから。
悲しむあいつに、なんて言ってやれば良いんだろう。
あぁ…はやく、帰らないと。
帰って、頭撫でてやらないと。
けれど目蓋が酷く重い。
こんなところで寝たら、皆に笑われる。
でも、眠いな……。
帰って、添い寝、してやりたかったな……、
なぁ、泣くな、よ。
今すぐ、帰るから、
今……すぐ……

かえ……る、から……、











―Game over―







終わり。



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