さぁ走りましょう。




土曜日。
AM.8:30…。

「びゃあああああああ!」

ね、ね、
寝坊したぞぉぉぉぉぉぉ!

気付いたら止まっていた目覚まし。
慌てて家を飛び出した。


「部活はマズイ部活はマズイ」

部活を遅刻なんてしたら、顧問その他諸々に何て言われるか!
とにかく猛ダッシュした。


「うぉぉぉぉ」

走りながら携帯の時計を見ると、このスピードでは絶望的である。
もう泣きそうだ。


チリンチリン

「ふぇ?」

「寝坊しやがったな名字!」

「げぇ!」

ここで現れた笠松先輩。
もうダメだ。

笠松先輩は自転車だから間に合うのだろう。
ギリギリっぽいけど(笑)
寝坊かな(笑)


「(笑)じゃねぇよ」

「ひぃ!」

「あーったく…」

また声に出してしまった自分を悔いていると、先輩が荷台を指す。

「乗ってけ!」

「え?え?」

「遅刻したいんかボケ!」

「乗ります!」

口調が変わり、キレる先輩にびびる。
慌てて荷台に跨った。

「よし、飛ばすから掴まってろよ」

「えぇー…」

ガクンと首が揺れ、自転車が風を切り始めた。


「びょぉぉぉぉ!」
空気抵抗に負けないよう、先輩のシャツをきゅっと掴む。


ん…?

あれ…?


先輩の背中、こんなに大きかったっけ?

こんなに…逞しかったっけ?


ドクン…!


心臓が大きな音を立てた。
苦しい…。

顔が熱いよ。
どうしちゃったの私…。


「…おい!」

「はっはい!」

「あと何分だ!」

「あ、10分です!」

「よし!間に合う!」


間に合うと言いつつ、スピードを上げる先輩。

私は不整脈を抱えながら、黙って座っていた。



「「セー…フ」」

なんとか体育館に間に合った私たち。
監督はまだだった。

「先輩、ありがとうございました…」

「お前が遅刻するとオレまで怒られるんだよ」

「そっそうだったんですか!」

私ってばなんて危ない橋を渡っていたんだ…。

「それより課題、持ってきたんだろうな」

ギロリと相変わらずの目つきで睨まれる。

「もちろんでございます!」

慌ててプリントの束を見せた。

「うし、じゃあ部活後な」

先輩はポンッと私の頭に手を乗せると、腕で汗を拭いながら着替えに行った。


そんな先輩を見て、ドクリ…とまた音を立てる私の胸。

本当、どうしちゃったんだろう。


「名前先輩!顔赤いっスよ」

黄瀬くんに急に声をかけられ慌てる。

「そ、そう?」

「大丈夫っスか?」

「大丈夫ー!」

なんだか恥ずかしくなって、顔を上げられなくなった。


どうしたの?
どうしたの?

私の身に何が起こったの!



「集合ー!」


監督の隣に立ち、部員たちと向き合う。
監督は部員に話をしている。

私はチラリと笠松先輩を見た。

真剣そうな顔つきで話を聞く先輩。


また顔が熱くなってきた!
そわそわしてしまう…。

「お前は何をもぞもぞと動いているんだ!」

バシッと監督から叩かれる。

「す、すみません!」

怒られたー。
ひーん。

部員の笑いをこらえる空気が伝わってきて、そっと彼らを睨む。
(早川シメる!)

すると呆れた目つきの笠松先輩と目が合った。

「…!」

慌てて目を逸らした。
理由は分からないけど、何だか恥ずかしくて…。



体育館にバッシュ独特の音が響く。

部員の声を聞きながら、私は記録を取っていた。

笠松先輩のことが頭から離れない。

広い背中。
汗とそれを拭う腕。
頭に乗せられた大きな手。
呆れた顔。

「うぅ…」

いつもと違う自分に戸惑いを隠せない。
つらいよー。


結局部活の間、私の脳内には笠松先輩がたくさんいて、軽くノイローゼになりそうだった。


部活後先輩の家に行くのに…

「どうしよう」

制服に着替えながら、ぽつりと呟いた。






★★★★★★★★★★★
100925

*












「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -