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土曜日。
いつもならまだ寝ている時間だけれど、目が覚めてしまった。それも当然だ。なぜなら今日は私の生徒(らしい)日向くんらが月島くんたちとゲームをする日だから。

見に来てほしいと言われてたけど…いやいや私は部外者だし。

チラチラ時計を見てしまう。
…気になる、昨日会った月島くんたちが相手ではどんな結果になるか少し不安だ。

「ちょっとだけ…こっそり覗いてみようかな」

少し様子を見たら帰ろう。
土曜日とはいえ学校に行くので急いで制服を準備した。







体育館の窓にしがみついて覗いてみると、潔子ちゃんの後ろ姿が見えた。そしてその奥では絶賛試合中で、なんだか日向くんと影山くんは苦戦しているようだった。
そこに菅原が「なんかこう、うまく使ってやれるんじゃないの!?」と一生懸命アドバイスをしている。

ハラハラしながら見守っていると、2人は速攻を繰り出して、月島くんたちが固まった。そして同じように固まる私。なに、あの技。
しかも澤村が「日向、目つぶってたぞ」なんて言い出すから、全員声を出して驚いてしまう。私も大声を出しそうになるのを必死に堪えた。




なんとか試合を制した日向くんと影山くんは、烏野バレー部に正式に入部できたようだ。はぁーよかったと胸を撫で下ろす。あまり手伝うことはできなかったけど、それでも2人が目標をクリアできたことはすごく誇らしい。






「帰るか」

見つからないうちにそっと体育館から離れようとすると、ちょうどこちらへ向かってきていた武田先生に遭遇した。

「あれ?何か用でしたか?」
「いえっ!通りかかっただけで!」
「?」

早くこの場を離れようとコソコソしていると、急に背後から肩を叩かれて悲鳴をあげそうになる。
ゆっくり振り返れば、そこには笑顔の澤村がいた。

「こんなところでどうしたんだ?」
「いや、通りすがりの者です」
「土曜日に、帰宅部エースが、体育館の前を通りすがるのかな?」
「うっ…」

正論をぶつけられてしまえば私は言い返すことができない。
武田先生は「?」と首を傾げて私たちを見ている。
私が日向くんたちに協力してたことがバレたら、菅原とか田中くんのことまでバレそうだ…。それは阻止したいが…。

なんて頭をフル回転させていると、澤村がため息をつき「とりあえず」と切り出した。

「ありがとな。色々」
「へっ?」
「…せっかくだから、待ってろよ」
「え、なにを」
「部活終わったら肉まん奢るから、一緒に帰ろうぜ」
「!」







「あ!名字先輩!!チワーッス!」
「日向くんこんにちは」
「俺たち勝ちました!部活に参加できます!!」
「そうなんだ、おめでとう!」

言われた通りに待っていたらバレー部一同が現れて、みんなで坂ノ下商店に向かった。
店内にいる澤村を待つ間、秘密の特訓をしたメンバーで勝利を噛み締める。
すると日向くんは影山くんに自慢するように

「名字先輩、今度またサーブ見せてください!」

とはしゃぐので、ついいたずら心が芽生えてしまった。

「えー、日向くんまた私のパンチラ見たいわけ?」
「うわぁ!!!そそそそういうわけじゃ!」

予想通り真っ赤になって慌てふためく日向くんが可愛くて面白くて、菅原と笑ってしまう。

「パンチラってなんだ?」
「影山知らないのか!パンツがチラッと見えること…え?パンツ?」

その横で影山くんが首を傾げているのに、ツッコミを入れた田中くんが一呼吸置いてから驚きの表情でこちらを見た。
そして、「う…羨ましい!」とずいぶん正直に頭を抱えうずくまっている。
菅原はそんな田中くんの頭を叩きながら「恥ずかしいぞ」と冷ややかに言って述べた。
あぁ、仲良いな〜バレー部。中学のときのバレー部メンバーは元気にしてるかなぁ。連絡してみようかな。




「…店の前でずいぶん恥ずかしい言葉が飛び交ってたけど?」
「だ…大地さん…」

平和な時間は束の間…
肉まんの袋を抱えた澤村が、笑いながら立つ姿は威圧感がすごくて、全員がその場で真っ青になって固まったのだった。

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201207




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