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「別に誰の事とは言わんが見掛けだけの筋肉野郎が多過ぎるな。アレで本気で試験を受かるつもりでいるのか?別に誰の事とは言わんが」
「ヒヒッ言うてやるナ。大方、力自慢で鳴らした口なのであろうナ……大海を知らぬ蛙は何時の世も多いモノよ」
ぐだぐだと刑部と話していたら、
「ククク…君タチの言葉に周りが殺気立ってるよ?」
「あ?…お前は…誰だ」
愉快そうな不快な笑い声。視線をやれば顔に星と雫の落書きをした変な男が居た。一言でこの男を的確に表現するならピエロ、だな。
ダサ…独特な服を着た男は身に纏う空気すらも独特なものを放っている。あまり関わり合いたくない類の手合いだろう…つまり変人とか変態とかそんな感じの。
「ヒドイなぁ◆ボクの事忘れちゃった?」
「フン、知らん。お前とは初対面だ。…誰さん?」
「『ヒソカ』だよ。もう!何度会ってると思うんだい?」
「知るか」
ピエロは俺と面識があるような馴れ馴れしい口振りだが覚えはない。コイツが人違いをしているという可能性はないだろうか。世界には同じ顔が三人居るらしいし。
俺の反応が芳しくなかったせいなのか男は次に、
「んー…いい加減覚えて欲しいな。ねぇ、イルミからも言ってくれないか?ボクとクロロは仲のいいオトモダチだって」
刑部へとにやりとした笑いを貼り付けたまま話しかけた。
刑部が「チィッ」と盛大な舌打ちをかます様子からして知り合いだが仲良しハァトな間柄ではなさそうだ。
「ぬしとコヤツが友とナ。ヒヒ、笑わせよる……それにしても………よく俺だって分かったね、変装してるのに」
「一度見た事ある姿だったからね」
おい、イルミの口調に戻ってるぞ。
刑部のジト目を受けながら楽しそうにピエロは語る。この男の顔のパターンには気味の悪い笑顔しかないのだろうか。
「…ふうん、どうでもいいけど。で、何でお前が居るの」
「どうでもいいだなんてイルミはヒドイね、フフフ。ボクもライセンスが欲しくてね」
「ふーん、どうでもいい」
「あっどうでもいいってまた言ったね?ボクそろそろ泣いちゃいそうだよ」
しくしく、だなんてわざとらしい擬音を口にするピエロに刑部は「おえっ」と刑部でもイルミでもあまりしない顔をしてみせた。
「勝手に泣けば。あ、そうだ。試験の間は俺の事イルミって呼ばないで。呼んだら一回五十万ジェニーの罰金取るから」
○○したら罰金な〜…って小学生かよ!
いや、小学生と違ってコイツの怖ろしいところは有言実行という点だろう。本当に請求してくるからなぁ…。
「…本当に泣いちゃいそうだ」
そう本気かどうかよく分からない言葉を吐いてピエロは離れていった。
消沈したような雰囲気からすると………ま、言うまでもないか。
「で、結局今のは何者なんだ」
「腐れ縁の変態」
苦虫を大量虐殺したかのような渋い顔で刑部は吐き捨てた。

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