王と王と。
+
意地の悪い魔法使い。
消えたお姫様。
もし。もしも、アリー様が、僕だったら。僕の立場だったら。
どうされただろう…。
もし、今ここにアリー様がいたとしたら。
僕の事をどうお思いになるだろうか…。
笑って、いつもの笑顔を見せて下さるだろうか…。
それとも、一度も見たことないけれど醒めた目で見つめてくるのだろうか。
愚か者、と、罵って下さるだろうか。
城下。
煌びやかな城に、大きな門戸。
そこを守る門番が二人。
変わらない、記憶にあるままの光景に、苦々しい思いが溢れる。
ここを出た時は、がむしゃらな思いで出たというのに。
また、ここへ戻ってきてしまった。
ここ、ボクが昔、まるで道具のように使われた国に。
ボクが魔法使いとして使われ、捕われていた国に。
苦々しい思いを胸に、そのまま歩を進めば…、
「おい…、」
案の定、門番に止められた。
「何者だ、不審者め…、」
「触るな、うつけめ…、」
こちらの腕を掴みあげる門番の手を叩く。
代わりに、ぎろりと睨みつけ、
「黒衣の…、負の死神がきたと王にいえばわかる…」
という。
ボクの手を掴んだ門番は、ボクの言葉に訝しんでいたが、もう一人、初老の門番は目を見開いた。
「黒衣の…?」
「王に…、会えぬのなら、帰るぞ」
「お、お待ちください…!今すぐに…!」
初老の門番は、慌てて城へと走っていく。
どうやら、彼はボクのことを知っていたらしい。
慌てて戻ってきた初老の門番は、恭しくボクを城へと招いた。
そして、ボクを城の主、王の元へと案内する。
懐かしい、城内。
王座に座る、美しい、だけど少し冷え冷えとした美貌の、王。
その王は、ボクの知っていた頃の王ではない。
王の、息子、だ。
どうやら、後を継いだらしい。
だけど、憎たらしい顔は、なるほど、あの王の息子のようだった。
黒い髪に、白い肌。出来過ぎたように整っている、まるで人形のような顔。
子供の頃見た時とその顔は対して変わってはいなかった
「久しぶりですね…、魔法使いどの、」
言葉をかけられ、恭しく頭を下げる。
すると、王である男は、目を細め、
「お元気そうで…、お変わりなく」
「そちらも、お変わりなく。王位を継いでいたのですね…、」
「ええ。暴君だった父は、今や使い物になりませんから…、」
にや、と、嫌に勘に触る笑みを浮かべる。
なかなか食えぬ顔だ。
子供のころから、この王はそうであった。
ボクがこの国につかえていた時。この王は王子として、存在していた。
頭がよく、何をするにも考える王。
ただ、その性格は非常に冷酷でもあった。
幼いペットを気に食わなければ殺してしまうという残虐さも持っていた。
俺を散々道具にしてきた父君とは、似ている性格かもしれない。
父親を使えぬ者、とはっきり言ってしまうなんて。
意地の悪い魔法使い。
消えたお姫様。
もし。もしも、アリー様が、僕だったら。僕の立場だったら。
どうされただろう…。
もし、今ここにアリー様がいたとしたら。
僕の事をどうお思いになるだろうか…。
笑って、いつもの笑顔を見せて下さるだろうか…。
それとも、一度も見たことないけれど醒めた目で見つめてくるのだろうか。
愚か者、と、罵って下さるだろうか。
城下。
煌びやかな城に、大きな門戸。
そこを守る門番が二人。
変わらない、記憶にあるままの光景に、苦々しい思いが溢れる。
ここを出た時は、がむしゃらな思いで出たというのに。
また、ここへ戻ってきてしまった。
ここ、ボクが昔、まるで道具のように使われた国に。
ボクが魔法使いとして使われ、捕われていた国に。
苦々しい思いを胸に、そのまま歩を進めば…、
「おい…、」
案の定、門番に止められた。
「何者だ、不審者め…、」
「触るな、うつけめ…、」
こちらの腕を掴みあげる門番の手を叩く。
代わりに、ぎろりと睨みつけ、
「黒衣の…、負の死神がきたと王にいえばわかる…」
という。
ボクの手を掴んだ門番は、ボクの言葉に訝しんでいたが、もう一人、初老の門番は目を見開いた。
「黒衣の…?」
「王に…、会えぬのなら、帰るぞ」
「お、お待ちください…!今すぐに…!」
初老の門番は、慌てて城へと走っていく。
どうやら、彼はボクのことを知っていたらしい。
慌てて戻ってきた初老の門番は、恭しくボクを城へと招いた。
そして、ボクを城の主、王の元へと案内する。
懐かしい、城内。
王座に座る、美しい、だけど少し冷え冷えとした美貌の、王。
その王は、ボクの知っていた頃の王ではない。
王の、息子、だ。
どうやら、後を継いだらしい。
だけど、憎たらしい顔は、なるほど、あの王の息子のようだった。
黒い髪に、白い肌。出来過ぎたように整っている、まるで人形のような顔。
子供の頃見た時とその顔は対して変わってはいなかった
「久しぶりですね…、魔法使いどの、」
言葉をかけられ、恭しく頭を下げる。
すると、王である男は、目を細め、
「お元気そうで…、お変わりなく」
「そちらも、お変わりなく。王位を継いでいたのですね…、」
「ええ。暴君だった父は、今や使い物になりませんから…、」
にや、と、嫌に勘に触る笑みを浮かべる。
なかなか食えぬ顔だ。
子供のころから、この王はそうであった。
ボクがこの国につかえていた時。この王は王子として、存在していた。
頭がよく、何をするにも考える王。
ただ、その性格は非常に冷酷でもあった。
幼いペットを気に食わなければ殺してしまうという残虐さも持っていた。
俺を散々道具にしてきた父君とは、似ている性格かもしれない。
父親を使えぬ者、とはっきり言ってしまうなんて。