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「それで、どうして、我が国にお戻りに?今までどれだけ探しても見つからなかった貴方が…」
「別に…。気まぐれですよ」
「気まぐれ…ねぇ…、」
ちらりと、見据えられる。
ボクは何食わぬ顔で、その視線を交わした。
心を読まれてはいけない。
特に、ずるがしこい王に自分の腹を読まれては。
アリー様を、傷つけたかカサル王の国を制圧する為、この国を利用しようとしているなどとばれるわけにはいかない。
「別に、これといって、用はありません…。ただ…」
「ただ…?」
「世情を知ろうと思いまして。隣国の、トールズの…カサル・マグアイア王が近々、結婚されると聞いて…。大国同士が結婚されるのです。さぞ、こちらの国は焦っていると思いまして…」
「大国同士…か…。」
ボクの言葉にふふ、と笑う。
大国同士の結婚など、この王にとっては脅威ではないのであろうか。
他国が力をつけるというのに。
「随分、余裕ですね…。
聞いた話では、貴方の代になっても戦に明け暮れ…、領土を増やしているとか…」
「ああ。おかげさまで…。
あなたがいなくなった時、国は一時期没落しかけたが…、私たちは、ある兵器≠見つけまして。おかげで、貴方がいなくてもこの国は成り立っているのです」
「兵器…?」
「そう…兵器、です…」
ニコリ、と笑って、王は椅子から立ち上がり、ボクに近寄ってくる。
ニコニコと笑いながら。
「兵器って…、」
「悪魔のような、兵器ですよ…。魔法使い殿…」
ただならぬ空気を纏わせながら、じわじわと近寄ってくる王。危険だ。
そう、頭の中で警笛が鳴る。
しかし、足は、まるで金縛りにあったかのように動かず、ボクはただ王を見つめることしかできない。
「ほんとうに、貴方は綺麗ですね…、子供の時から、そう思っていました…、」
「え…、」
「白い肌、黒々とした髪、寂しげに揺れる双眸。どれもが…美しい…。この手に、閉じ込めたいほどに…」
そっと、両頬をくるむ、冷たい手。
まるで、死者のような冷たい手。
「王…、」
「この国は、兵器のおかげで、貴方がいなくても、成り立っていけるようになりました…しかし、私は、貴方を忘れたことがありませんでした。
無表情の、からっぽの瞳で、命令のまま魔法を使い、村を滅ぼしてきた、貴方が…。誰よりも美しい、貴方が…」
高揚とした笑みを受けべ、告げる王。
王は、呆然とするボクの腰を抱き寄せ、首筋にキスを落とした。
強く、噛みつくほどの、キスを。
咄嗟に、王を投げ飛ばし、離れる。
王は投げ飛ばされたというのに、非常に楽しそうにボクを見ていた。
「帰ります…、私は、ただ一国の王である貴方のお考えが知りたく話をしにきただけ…。下世話な事をしにきたのではありません…」
「そうですか…、」
きっぱりと告げるが、王は、読めない笑みで笑っている。
「魔法使い殿…、」
「はい…、」
「…貴方の目的で逃げ出した我が国に顔を出したのか知りませんが…、私は貴方を愛しています…。もし、私の元にきたのなら、私の全てをあなたに差し上げましょう」
「全て…?」
「はい、全て、です…」
キラリ、と光る王の瞳。
この男は…全王よりも、危険な男かもしれない。
ボクは、とってつけたお辞儀をすると、そのまま魔法を使い、姿を消した。
王が、声をあげて笑っているのなんて知らずに。
「別に…。気まぐれですよ」
「気まぐれ…ねぇ…、」
ちらりと、見据えられる。
ボクは何食わぬ顔で、その視線を交わした。
心を読まれてはいけない。
特に、ずるがしこい王に自分の腹を読まれては。
アリー様を、傷つけたかカサル王の国を制圧する為、この国を利用しようとしているなどとばれるわけにはいかない。
「別に、これといって、用はありません…。ただ…」
「ただ…?」
「世情を知ろうと思いまして。隣国の、トールズの…カサル・マグアイア王が近々、結婚されると聞いて…。大国同士が結婚されるのです。さぞ、こちらの国は焦っていると思いまして…」
「大国同士…か…。」
ボクの言葉にふふ、と笑う。
大国同士の結婚など、この王にとっては脅威ではないのであろうか。
他国が力をつけるというのに。
「随分、余裕ですね…。
聞いた話では、貴方の代になっても戦に明け暮れ…、領土を増やしているとか…」
「ああ。おかげさまで…。
あなたがいなくなった時、国は一時期没落しかけたが…、私たちは、ある兵器≠見つけまして。おかげで、貴方がいなくてもこの国は成り立っているのです」
「兵器…?」
「そう…兵器、です…」
ニコリ、と笑って、王は椅子から立ち上がり、ボクに近寄ってくる。
ニコニコと笑いながら。
「兵器って…、」
「悪魔のような、兵器ですよ…。魔法使い殿…」
ただならぬ空気を纏わせながら、じわじわと近寄ってくる王。危険だ。
そう、頭の中で警笛が鳴る。
しかし、足は、まるで金縛りにあったかのように動かず、ボクはただ王を見つめることしかできない。
「ほんとうに、貴方は綺麗ですね…、子供の時から、そう思っていました…、」
「え…、」
「白い肌、黒々とした髪、寂しげに揺れる双眸。どれもが…美しい…。この手に、閉じ込めたいほどに…」
そっと、両頬をくるむ、冷たい手。
まるで、死者のような冷たい手。
「王…、」
「この国は、兵器のおかげで、貴方がいなくても、成り立っていけるようになりました…しかし、私は、貴方を忘れたことがありませんでした。
無表情の、からっぽの瞳で、命令のまま魔法を使い、村を滅ぼしてきた、貴方が…。誰よりも美しい、貴方が…」
高揚とした笑みを受けべ、告げる王。
王は、呆然とするボクの腰を抱き寄せ、首筋にキスを落とした。
強く、噛みつくほどの、キスを。
咄嗟に、王を投げ飛ばし、離れる。
王は投げ飛ばされたというのに、非常に楽しそうにボクを見ていた。
「帰ります…、私は、ただ一国の王である貴方のお考えが知りたく話をしにきただけ…。下世話な事をしにきたのではありません…」
「そうですか…、」
きっぱりと告げるが、王は、読めない笑みで笑っている。
「魔法使い殿…、」
「はい…、」
「…貴方の目的で逃げ出した我が国に顔を出したのか知りませんが…、私は貴方を愛しています…。もし、私の元にきたのなら、私の全てをあなたに差し上げましょう」
「全て…?」
「はい、全て、です…」
キラリ、と光る王の瞳。
この男は…全王よりも、危険な男かもしれない。
ボクは、とってつけたお辞儀をすると、そのまま魔法を使い、姿を消した。
王が、声をあげて笑っているのなんて知らずに。