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だから壊した。
王が好きだと告げるアリー様を。
言葉を封じ、泡となる魔法をかけ、更には王とむすばれぬよう邪魔をした。
すべては、ボクの醜い感情のセイ…。
すべてはボクのせいだった。
可愛い健気な人魚姫が泡となって死んだのは、ボクのせいだった。
本当は、アリー様が泡にならずに消えずに人間にする魔法もあった。
それをかけなかったのは、偏に、ボクが他の男に心奪われたアリー様を許せなかったから。
声を奪ったのは、アリー様の綺麗な声を他の男に聞かせたくなかったからだった。
ボクの身勝手な嫉妬により、アリー様は死んでしまい、ボクは初めて愛した人を失ってしまった。
ボクが魔法をかけたから。
ボクが、アリー様に恋をしてしまったから。
アリー様がなくなった悲しみと、自分がした魔法の取り返しのつかない事柄に、後悔し叫びたいほどの自責の念に苛まれる。
兄様、兄様とボクを呼んでくれたアリー様。
唯一ボクを必要としてくれたアリー様。
そんなアリー様はもういない。
ボクのせいで…。
王と結ばれないように願ったのは、ボクなのに。
「くそ…、」
王さえいなければ…。
アリー様の心を奪った王さえいなければ…。
そしたら…ボクのものにならなくても、誰のモノでもなかったのに。
誰のアリー様でもなかったのに…。
言いがかりだと頭ではわかっている。
王は、ただアリー様に惚れなかっただけ。
アリー様に魔法をかけ、最終的に泡にしてしまったのはボク。
わかっている、のに…。
許せない。
王が、許せない。
王を、殺したい。
アリー様が泡となったのに、のうのうと生き他の女と結婚しようとしている王を、己の手でどうにかしたい。
出来れば、そう、この手で…。
そして、ボクも…。