短編 | ナノ

「ながと…俺、会長のこと、好きになっちゃったんだ…」

そう、顔を赤らめて話す羽住。

「永戸…永戸は俺のこと、好きでしょ?だから…」

俺の言うこと、なんでも聞いてくれるよね?


恋は、した方が負けだという。たぶん、想う量が多い方が、自然と惚れた相手の言うことを聞いてしまうのだ。

好きなくとも、俺は。

「ああ…」

羽住の言葉をノーといえなかった。




永戸、お願いがあるんだ・・・。
あのね、日向会長に色目を向ける、上山をね、レイプして欲しいんだ。
もう学校に来られないくらい、めちゃくちゃにしてほしいの。
上山がいるから、会長は俺のモノにならないから。

いつもの羽住からのお願い。
羽住から相手を痛めつけレイプをしろ、と言われるのは、多々あった。
羽住は、それだけ会長が好きなのだろう
俺が羽住を好きなように。


「永戸だけだよ、こんなこと頼めるのは」

そういわれたら、俺には、逆らうすべはなかった。

狂ってる?そうかもしれない。
あいつが手に入るのならば。

誰が傷ついたって構わない。


 あいにく、俺は目が鋭く顔は強面で、黙っていればいつも不機嫌そうで、目があえば誰にでも殴りかかる不良、とうわさされていた。

だから、羽住にお願いされて、羽住の気に食わないやつにそれとなく忠告≠してきた。

といっても、素直に俺の言葉を聞いてくれる人間なんていないだろう。
だから、決まって、俺は「俺に無理やり強姦させられたくなければ、学校を退学するか、会長に近寄るのをやめろ」とくぎを刺す。

大抵、羽住が気に入らないというやつは、ちわわみたいに可愛い男ばかりだったから、俺が脅したらすぐにおびえ、学校を退学したり、会長に近づくのをやめた。

何人かは、俺の忠告を聞かず、会長に近寄ったようだけれど。
そんなやつらは、大抵、他の羽住シンパの餌食になり、学校をやめていった。

そんな学校をやめていった人間を見て、皆は「俺がレイプしたからやめていった」と誤解した。俺は今まで一度だって、誰かを無理やり抱いたことはないんだけどな。

まぁ、別に周りが何を言おうと関係なかった。羽住さえいれば。

そんな羽住狂いの俺は、周りから見ても一目瞭然で、いつしか羽住の犬と言われるようになった。

羽住が気に食わないやつは、俺に強姦されおもちゃにされる。
羽住が恋をしている会長に近づくものは、俺が強姦する。


羽住に内緒で制裁し、飼い主である羽住の安全を守るドーベルマン。
そう学園で言われるのが俺だった。


 今回、羽住がレイプしろといった、上山は、男にしてはかなり可愛らしい男だった。
ばさばさとした長い睫に、憂いを帯びた唇。長い前髪に、襟足までかかるくらいの男にしては長い髪。

男にこういうのは変だが、どこか上山は浮世離れした、色気があった。
ふっと微笑まれれば、たちまち、皆虜になるという。

羽住と違い、容姿に恵まれすぎた、その姿。

ただ、性格は羽住やクラスメートいわく内気で、いつも誰かの陰にかくれているような、そんな性格らしい。

人を引き付け、和ませる太陽のような羽住とは正反対的存在な人間だ。


 そんな上山は、会長とは幼馴染らしく、あの誰にも笑顔など向けたことのない会長が、上山には笑っていた。
それも、会長は上山の様子を気にかけているらしく、上山だけ、見つめる視線が違う。

会長は上山が好きなんだな…、と俺でさえわかった。
俺でさえわかったことを、会長に恋をしている羽住が気づかないわけがなかった。
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -