短編 | ナノ

中学の時。
沢山悪さをした。夜中出歩くことが多々あった。
母親が嘆いたことも多かった。

そんな中、羽住は、けして遠ざかることなく、近すぎることもなく、俺を見ていた。
時に一人で泣いていた俺の母親のそばにいて。


『永戸は今、ちょっと、羽目を外しているだけだから。すぐまた、おばさんのところに戻ってくるよ』

そう言い続けたらしい。

今でも、母親は羽住がお気に入りで、俺よりも羽住を実の子供のように接する。
俺はいつまた、暴れるか、夜遊びして喧嘩三昧の日々に戻るか気が気じゃないんだろう。
どこかいつも俺たち親子には距離があった。

そんな距離を埋めてくれるのが、羽住の存在だった。
羽住がいなくては、ダメ。
俺には羽住がいないとダメだ。

俺は羽住を必要としている。
俺は羽住に恋してる。
恋に気づいてしまえば、時間も抵抗なかった。
ただすんなりと、羽住を必要としている自分に気づいた。


 高校はなんとかして、羽住と同じ学校に入った。
高校受験するころには、俺も落ち着いていて、反抗期を過ぎていたし、なにより羽住への感謝の気持ちが大きかった。
同じ学校に入れたときは本当にうれしかった。


ただ、羽住は平凡なのに、昔からどんな人間も惹き付けてしまう。
一緒にいられれば、それでいいと思ったのに。

傍にいればいるほど、もっともっと、と欲が出てしまう。
ただ傍にいるだけじゃ、満足できない。


 入学した高校で、羽住は学校の人気者を次々とひきつけた。

生徒会副会長、書記、会計、風紀委員、学級委員…。
羽住は自然と、その人間の淋しさやら必要とするものを嗅ぎ付けるんだろうな。

みんながみんな、羽住に狂い、自分のモノにしようと躍起になった。

唯一、羽住の虜になっていないのは、この学園で一番の人気を誇る、生徒会長くらいだった。

そんな生徒会長を、羽住が好きになったといったのは、ちょうど、学園に入学してから2か月目のことだった。
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