短編 | ナノ

「私はこれから城へいく。
クリスは街を見学したらいいだろう…」

ポンポンと、クリスの頭を叩くリリルク。
自分では気づいてなさそうだが、その瞳は愛しさが滲み出ている。

クリスは、はい!と威勢よく返事をし…、

「あ、ついでに、足りない薬品も買いますね!」

と言う。


「いや…薬品はお前に頼んでも…」
「ちゃんと買えます!」
「いや…でもな…」

リリルクが返事を躊躇すると、またクリスの顔が曇る。

「僕…、そんなに頼りないですか…」

クリスはこういってはなんだが、かなりドジな弟子だ。
今まで散々、頼み事をしては失敗し後始末に走るのはいつもリリルクの役目になっている。


たかが買い物。されど買い物なのだ。

「……、」
「あの…ちゃんと切れかけの薬品チェックしたし、お金もちゃんと持ってきました。だから…」
「薬品なんか買わなくても…。好きに街を見ればいい。お金も好きに使ったらいい。気兼ねするな…」
「でも…っ、僕…ししょーの役に…」
「いいんだ。お前は街にずっと来たかったんだろう?またいつ来れるかわからない。今日くらい思いっきり遊んだらいいだろう」

リリルクは、そう諭し、いいな…と念を押す。

クリスは不満気に頬を膨らませていたが、一瞬何かを思案し…

「じゃあ、僕好きにします!」

と言い切った。

「いい子だ。じゃあ待ち合わせは…そうだな…夕刻。お日様がオレンジになる頃。この木の下だ」

街と王宮のちょうど境にある木を指差し、いいな…とリリルクはクリスに確認する。
クリスは時計が読めないのでイマイチ心配だが…

「わかりました、行ってきます!」

クリスはリリルクの心配をよそに、街へかける。

リリルクはしばらくクリスが心配でその背中を見つめていた。

偉大で人々に恐れられている魔道師リリルクもまな弟子には過保護だ。

立派に保護者をしていると言えよう。


クリスの背が見えなくなると、リリルクは王宮へと急ぐ。

どうせまた、戦争の話に自分の力が必要だと言うのだろう。

リリルクは自然と強張る顔をそのままに、王宮へと急いだ。
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