オタク×女装不良
※エロなし、
前のやつ あの一件以来、湯原とつるむようんなった。湯原はエロだけど、俺オタクかくしてっし、アニメの話とか出来んのすげー嬉しいから、仕方なくエロだけど、つるんでる。
「あ、やべ」
「だっせ、っあ!」
「ふはは、江崎くんだっせ」
今日は湯原ん家でだらだらごろごろゲームしたり、ゲームしてんの見たり。それにしても、んーー…湯原ん家の匂い、めっちゃ甘い匂いで、すき。俺ん家男ばっかだから、こーゆーの慣れなくて、ちょっとそわつくけど。
「あ、約束してたんだった。狩り行かなきゃ。江崎くんも一緒にやってみる?」
「やんない。漫画見して」
「いいよ、そこのクローゼットにもあるから」
一緒にゲームしてたけど、湯原が狩りに行っちゃって、俺それはやってないから、手持ちぶさたになった。
なんで一緒にやらねーかっつーと、俺、あれ、血出るゲームはダメ……。ケンカとかだと頭に血上ってからいんだけどよ、素面の状態でモンスターとかゾンビから血バーッッ……無理無理無理無理。
ま、いいわ。漫画借りよう、このクローゼットだな。
「あ!」
「うっわビックリした、あ、ぴよった」
「湯原!!」
「待って待って死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ」
「湯原おい!!」
「死んじゃう死んじゃうらめぇ」
クローゼット開けたら!俺の今コスプレやってるジャンルのずっとずっとずっとずーーーーーっと探してた、薄い本が!!!古いジャンルだから、どこにも売りにだされてなくて、でも好きだったサークルさんの最初のころのやつで、再録されてねぇしで、嘘だろ、どーしてここに!!?
「しーんーだー…江崎くんなに。なんなの、ピンクローターでもあった?したいの?」
「ちげぇよエロ死さらせ!これ!この同人!!これどこで手にいれた!!!?」
「あ、それ僕作ったやつ」
「!!!!?」
露骨に不機嫌になった湯原から、衝撃の言葉が。僕が、つくった、え、え、待って意味わかんない。意味わかんない。憧れの××××(サークル名)さんが、湯原???俺、このサークルさんハマったの、サークルさんがジャンル抜けた後だから、どんな人かはしんねーけどよ。湯原こんな絵上手いの??
「たぶんまだデータ残ってる、ほら」
「!!!」
「これ下書き」
「!!!!!」
湯原が保管してあったデータを見せてくれる、は、はあぁ……しゅ、しゅごいよぉ……マジで××××さんの原稿だよぉ……。やべぇ涙出る。
憧れのサークルさんがまさか湯原だなんて、まぁ狭いジャンルだから、こういうこともあんのかな、狭いジャンルでなくても、神だけどさ。俺ん中ではよ。リアルはエロだけどよ。
次いで湯原はクローゼットを漁って振り向いた。
「んしょ、よっと、あったあった、その本の残部」
「!!ななななんか要求したみたいでわりぃな、でもどうしてもっつーなら!!!もらってやっても!!!いーぜ!!!!?」
ちょーだいオーラむんむんの俺に、湯原はニヤリって擬音つきそうな感じに笑った。
「いいよ、ただし交換条件」
「湯原、湯原ぁ、お待たせ、帰ろう」
「なんで、今来たとこじゃん」
「で、でもよぉ、うう、うー…」
交換条件が『女装して、お外デートしよう』だったばっかりに、うう、なんで外でこんな格好……!!イベントで女装は普通だけど、外で女装はへんたいだぁ…つかまる……!
待ち合わせた湯原は普通に男物なのに、俺はお気に入りのウィッグつけて、元々細眉(ヤンキー仕様)を下がり眉に書いて、マスカラ盛り盛り(コスプレじゃないから、アイメイク物足りない。ダブルラインないと不安だ)、カラコン(三白眼生きつら)入れて、チークは幅広く入れて唇は女の子らしくぽってりさせて、萌え袖タートルネックワンピにニーハイブーツ(関節隠すだけでクオリティ全然違う)、ピアスは普段ぜってぇ使えねぇ猫のやつで、ネイルはセルフでやるしかないからそれなりに。
……あーもう!!デートっつーから、結局フルで靴から何から揃えちまった!オタクは突然ディティールこだわり出すから!ピアスとかいらねぇわ!そもそも相手湯原なんだから、ここまで揃えなくて良かった!俺バカ!やる気マンマンみてぇじゃん!!!
「猫」
「ひゃっ」
湯原が俺のウィッグをそっと手でよけて、耳を見る。突然冷たい風が耳にかかってひんやりして、
「かわい」
「ーーーーー〜〜〜っっ!!」
なんか、そう言われると、なんか、頭んなか痺れたみたいになって、デロってとろけた感じになってしまう。そうなんだ、かわいいんだ、当然だ、湯原、猫派だし、男はキラキラチラチラするのが好きって雑誌にあったから、キラキラ髪の隙間から見えて、でも大人っぽすぎなくて、ガーリーなの湯原好きそうだなって、俺そうだと思って買ったもん。かわいくてしかるべき。もっと、もっと言えよ。かわいいって、かわいいって、もっと褒めて。
「普段つけてないやつだ、買いにいってくれたの?」
「ん、うん……」
「今日の為に時間かけてくれたんだ、ありがと。江崎くんかわいい。」
いーーーーあーーーーーーーーーーーーーーー!!!!脳が!!!!はぜる!!!!湯原がそんな風に笑うから!!!脳が壊れる!!!!わかんねぇ、もう俺のアイデンティティがわかんねぇ!!!心臓がはぜる!!!視界がかすむ!!!!脳が!かわいいって、かわいいって、褒められると心臓んとこキューーーーーっってなって!!!いま最高にキューーーーーーーーーーーーーーーっってなって!る!!
つか!!そうだよ!!!そうなんだよ!!湯原!!おめーなんか今日何時起きだ!!?言ってみろ!!!9時!!?ナメんな殺すぞ!!!俺は!!!!6時に起きて!!!風呂行って髪やって顔やってクソ歩きにくい靴でここまできてんだよ!!!!!なんでかって!!?てめぇに!!てめぇに!!そう言わせるためだろがぁ……。それだけなんだぜ……。
なに、もう、言ってしまったらパンツだって、毛の処理だって。
「江崎くん甘いのは?」
「……(なでなでされたい)」
「好き?嫌い?」
「…………だいすき」
「そう言えば江崎くんてどうして不良やってんの」
「ん?」
パンケーキ屋に行き、クリーム盛り盛りのパンケーキを二人で食らう。どうやってパンケーキ屋まで来たかは全く覚えてないが、気付いたら目の前にパンケーキがあった。生クリームあんま好きくないけど、これさっぱりしてて、まぁ食べれる。
「湯原は地元ここじゃねぇからわかんねぇのか。俺ん兄ちゃんはここら辺仕切ってた不良でよ、頭すげー良くて、なんでも出来て、親もセンコーもポリも兄ちゃんばっか見てるくらいすげー兄ちゃんで」
「じゃあ憧れて?」
「いや、ちげぇな。俺、小坊んころとかは弱っちくていじめられたりなんかしててよ」
「うん」
「で、俺がいじめられたってなると、兄ちゃんクソ過保護だから300倍返しすんだよ。俺のクラスメートが兄ちゃんに紐なしバンジー強要されて、それを泣きながら止めた時、俺がいじめられると人が死ぬんだと思って。強くなんねーとってなってだな」
「なにそれ、なにそれ、なに、え……?」
「もし兄ちゃんに、俺がれいぷされたって知られたら、湯原たぶん血みどろフィーバーで磔刑」
「(わらえない)」
湯原はその……憧れのサークルさんだしっ、その、か、かわいい、褒めてくれっから殺させねーけど。
…………「かっこいい」も兄ちゃん、「頭いい」も兄ちゃん、「強い」も兄ちゃん、「カリスマ」も兄ちゃん、「度胸ある」も兄ちゃん、「モテる」も兄ちゃん、「みんな期待」してる兄ちゃん。
俺はどこまで行っても兄ちゃんの弟で、兄ちゃん以上の褒めことばなんざ、もらったことねぇ。越せるはずもねぇ。だから俺が認めてもらうには、兄ちゃんの立ち入らない土壌に行くしかなかったんだ。だから、だから、「かわいい」のは、俺。それだけが、俺を強く揺さぶるんだ。だから、湯原が、殺されたら困る。いやなんだ。
「じゃあそろそろ帰ろうか」
「えっ!!」
公園でアイス食べてたら、もう日が暮れそう。ゲーセン行って(ふざけてカップルプリ撮って、湯原はガンダムのとかクイズのしてた)、映画行って(寝てた)、男だけじゃまず入りにくいカフェでご飯して(量少なかった)
……誰も俺に気づかないで、誰も俺におびえなくて。最初は通報されんじゃねーかと気が気じゃなくて、でも、誰も何も言ってこねーし。
上手く言えねぇけど、足、すぐ痛くなるから、湯原がその度止まってくれるし、映画も、真ん中に近い方譲ってくれたし、ゲーセンで取れたプライズくれたし、カフェでもサラダとデザート交換してくれたし、こんな風にされたのは、初めてだったし。その、なーんも考えなくてよくて、たのしかったんだ。
何度か、手繋ごうかと思ったけど、何度か、もう少しカップルぽくしたほうがいいかと思ったけど、意味わかんねぇからやめた。ていうか、なにこれ、普通にデートしただけじゃん、意味わかんねぇ。俺は、俺はてっきり。
「……エロいこと、すんのかと」
「なにやらしー。江崎くんずっとそんなこと考えてたの?」
「…………」
「(黙っちゃった)」
アイス溶ける、ていうかなんで寒いのにアイスくってんだろ。だってアイスくってんのかわいいじゃん、無邪気かわいいかと思って。ていうか、なんで帰るの。何しに来たの、湯原、何がしてーかわかんねぇ。どうして俺とデートすんだよ。
「江崎くん」
「……」
「えーざーきーくーん」
「…んだよ」
「そういう時は、違うでしょ?言うこと、知ってるはずだよ」
こういう時、アイス溶ける、手べたべたする、湯原がしたいことわかんねぇ。てっきり。俺はローター入れてお散歩とかバイブ自転車とかノーパンミニスカで、みてぇなAV的なことだと思って。だから、パンツ、パンツ、パンツ……。わかんねぇ。なんでデートしてんだろ。
どうして…………はっ!!
もしかして、もしかして、湯原、俺に、惚れて、る………!!!?そうだ、そうに違いねぇ、だから俺に無体出来なかったんだ!そうだ!ゆ、湯原は俺が好きなんだ!!!!!!ど、どうしよう、そう思うと、なんか、すげードキドキしてきた!!!湯原は、俺が、好き。きゅきゅっと、体の芯が熱くなる。
「か、かえりたく、ない、の…」
湯原は俺がそう言うと笑った。
「(いきなりホテルはあれかと思ったけど、江崎くんマジでちょれぇ)」