惇淵
(リーマンパロ)
暑い日が続く中で夏侯淵は残業をする羽目になった。
大量の仕事が舞い込み、一日では終わる量ではなかった。
デスクの上でパソコンとにらめっこしながらキーボードを打ち込む作業が永遠と続いていた。
流石に一人でオフィスにいると寂しいと感じてしまう。
そんな時に携帯にメールの着信音が響いた。
携帯を開くとそれは夏侯惇からであった。
『今日はいつ帰れるのか?』
短い文字でも自分の帰りを知りたい従兄に対して夏侯淵は笑みが浮かんだ。
「今日は残業だから遅くなるよっと」
メールで返事を返すと再びパソコンに向き合い作業を続けた。
今日中に取引先への書類作成と見積書を作らないと明日の業務に響く。
だから必死だった。
カタカタとキーボードを打っていたがやはり集中力は途切れるもの。
休憩しようかなと思っていた時だった。
「淵、差し入れに来たぞ…」
「と、惇兄、先に帰ったんじゃないのか?」
「メールで遅くなると知ってな。わざわざ来たんだぞ…」
「そっか…」
夏侯惇が夏侯淵に風呂敷に包まれた物を手渡す。
「冷めないうちに食べろ…」
「えっ、まさか惇兄の手料理か?」
「ああ、簡単におにぎりを作った。お茶もあるぞ…やはり珈琲の方が良かったか?」
「ううん、これで充分だよ。今休憩しようと思ってたんだ」
夏侯淵は嬉しいのか笑顔が浮かんでいる。
夏侯惇は隣のデスクにあった椅子に腰掛けた。
夏侯淵は風呂敷の包みを解くとラップに包まれた少し大きめのおにぎりが三個あった。
「中身はお前が好きなものを入れた。鮭やシーチキン、明太子だ」
「惇兄、サンキュー。俺、惇兄の手料理大好きなんだよな…」
「そうか、そう言ってくれると作った甲斐があるな」
夏侯惇はクスっと笑うとペットボトルのキャップを外しお茶を飲んだ。
夏侯淵はおにぎりを頬張り嬉しそうだ。
「惇兄、ごっそーさまでした」
「淵、ご飯粒がついてるぞ…」
「えっ、何処?」
「とってやるから動くな…」
夏侯惇は手を伸ばすと口元についたご飯粒を取ると自分の口の中に入れた。
「ちょっ、惇兄…」
「何だ、勿体ないだろ残すのは?それとも妙な事を考えていたのか?」
「それは、その…」
恥ずかしくなったのか夏侯淵は顔を真っ赤にした。
夏侯惇はそんな姿が愛らしく感じた。
「早く仕事を終わらせて一緒に帰ろうな」
「ああ、俺頑張るよ…」
夏侯惇の言葉に夏侯淵はやる気が出たのか再びパソコンと向き合い作業を続けた。
それから30分後に作業が終了した夏侯淵は疲れたとぼやく。
「よく頑張ったな…お疲れ」
「惇兄が居たから頑張ったんだ。ありがとうな」
「そうか…」
会社を出た二人は夜遅い為か街灯だけが点いた道を歩いていた。
「淵、たまには手を繋いで帰ろうか…」
「うん…」
二人は手を繋いで安らげる家へと帰っていた。
終
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5th.Jun.2011
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