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Collaboration Novels
こちらは管理人と奈亜様(皐月様)とのリレー小説専用掲示板です。
[新規投稿]


[1]▼コラボ小説説明&注意書き
by 管理人
2011/03/17 00:24
・こちらの掲示板では管理人と奈亜様とのコラボ小説の作品を書く為に立ち上げました。

・基本的に淵と飛が受けな話がありますが、二人の打ち合わせによりそれ以外のカプの話を書く事になるかもしれません。

・たまに裏作品が混じる場合があります。
閲覧は18歳以上推薦をお願いします。

・荒らしにより書き込みは禁止します。
宣伝の書き込みもしないで下さい。

・以上の内容を理解した上で閲覧をお願いします。
マナーを守ってくれたら幸いです。


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[2]嫉妬 (惇淵)
by 管理人
2011/03/17 00:25
優しくて強くて憧れな従兄。
弱い自分にとってはそれは羨ましいと思ってしまう部分がある。
そんな従兄は誰にも好かれる傾向があるのか、毎日のように仕事の時も、暇な時も、夏侯惇の側には 人だかりが出来る。
そんな夏侯惇を夏侯淵は遠くから見ていた。
殿や張遼、仁兄までいる。
本当に惇兄は誰にでも好かれるんだな。
自分の側にいて欲しいのにそれさえも自分の我が儘なのはわかるけど。
まるで子供のようで嫉妬している部分があって嫌だった。
「惇兄は俺のなのに…」
あの優しい声も笑顔も自分だけのものなのに。
だけど周囲はそれを許してもくれない。
「どうしたんですか、夏侯淵将軍?」
高めの声が掛かり振り返ると張コウが心配そうに呟く。
「惇兄はいつも誰かと一緒だから嫉妬してた…」
「夏侯惇将軍は誰から見ても格好良いですからね〜」
「張コウもそう思うのか?」
「私はどちらかと言うと夏侯淵将軍が笑っている方が好きですけど」
張コウは夏侯淵に微笑む。
「そ、そうかな?」
「ええ…夏侯惇将軍は何かと忙しそうなので気晴らしにお茶でも飲みに行きませんか?」
「それもそうだな…」
夏侯淵は張コウの言われるまま、歩き出した。



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[3]嫉妬 (惇淵)
by 奈亜
2011/03/17 00:27
歩き始めると頬にあたる暖かい春の風。
穏やかな天候に気が晴れても良さそうだが、夏侯淵の心は何処か沈んだままだ。
前を行く張コウの背を追いかけながら、夏侯淵はそっと息を吐いた。
もやもやする感情が拭いきれない。
そんな夏侯淵に気がついて振り返った張コウと目が合う。
苦笑を浮かべた張コウに、夏侯淵は申し訳なさそうに頬を掻くと、歩みを止めてしまっている張コウの隣に並んだ。

「すまねぇ・・」
「将軍に浮かない顔は似合いませんよ」
「は?」
「笑ってください、夏侯淵将軍・・」
「お、おい、張コウ?」
「笑顔が見たいんです。」
見下ろしながら寂しげに言われて、夏侯淵は思わず噴出すと自ずと笑顔になる。
その笑顔を何処か優しく見守る張コウ。
「変な奴・・」
思わず呟いた後、じっと動かない張コウの背を一つ叩く。
「おら、行こうぜ・・・な?」
下から覗き込むように言う夏侯淵に、張コウは納得したように頷くと動き出した。
少しだけ浮上した気分に、夏侯淵は鼻で笑ってしまう。
心の何処かで情けなさを感じていた。
自分の従兄弟は、頼りがいがあり、いつでも真剣な姿勢で人と接する事ができる。
誰かを蔑んだり、人を不平等に扱う事を嫌う彼を多くの人が慕っている事に何一つとして不思議はない。
そんな事は百も承知で。
ただ、時々どうしても独り占めにできない苦しさに切なくなってしまうのだ。

「話なら私が聞きますよ?」
無言になりながら歩を進める中、不意に言った張コウの言葉に、思わず息をつめた夏侯淵は驚いた表情のまま張コウを凝視した。
涼しい表情のまま行き先を見つめる相手に、思わず小さな声で呟いた。
「参ったなぁ・・」
その言葉に張コウの唇が笑顔に飾られる。
夏侯淵はつられたように笑うと大きく息を吐き出した。
今日はこの目の前の男に、存分に今の思いを吐き出してやろうと思いながら。
「んじゃ、ま、頼むわ」
開かれた扉に身を滑らせながらそう言うと、張コウがクスクスと笑った。
扉の中は、どこか甘い香りが漂っていた。



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[4]嫉妬 (惇淵)
by 管理人
2011/03/17 00:41
店に入れば静かな雰囲気が漂い、居心地が良い。
店の者が二人を一つの円卓がある席へと案内する。
案内されるまま二人は窓際にある円卓の席へと腰かけた。
夏侯淵は辺りを見回す。
こんなにゆっくりできる店があったなんて知らなかった。
「張コウ、いい店だな…」
「私のお気に入りの店です。たまに一人でくつろぎたい時とかよく利用してます」
「ふうん、そうなのか?」
それにしてもなんだか甘い匂いがする。
甘味とかそういったものであろうか?
「張コウ、俺こんな所初めてだからどうしたらよいかわからないんだ」
「なら、私がお奨めのお茶と甘い物を頼みますか?」
「ああ、頼む…」
張コウは店の者を呼ぶと、二人分のお茶と甘い物を頼んだ。
その慣れている動作に夏侯淵は黙って見ていた。
「将軍、話しても良いですよ…」
張コウは夏侯淵に話を振る。
張コウの計らいでこの店に気晴らしに茶を飲みにきたのに、いざという時には話づらいのだ。
「…惇兄の事だけど」
「はい」
少し間を置いて夏侯淵は話を始める。
「どうしてあんなにも好かれやすいんだろう?頼りになるし、頭も良いのはわかるけど、なんか皆が惇兄の側にいたいと思っているのかな?」
夏侯淵は疑問を張コウに振る。
張コウは夏侯惇に対しては普通の感情で接してはいるがあまり好ましくはない。
自分が好いているのは夏侯惇よりも夏侯淵なのだから。
「夏侯惇将軍はやはり見た目も凛々しいですし、優しい中で厳しさもある。誰彼構わずではないがやはり夏侯惇将軍は周りの人間をひきよせるなにかがあるのでは?」
「そうなんだよな…惇兄は優しいし、格好良いし、誰もが憧れるんだ。だけど、俺ってすっごい我が儘な事を思ってる」
「何ですか?」
「惇兄を独占したいと思ってる…」
「独占ですか?」
「ああ…」
夏侯惇に対しての嫉妬の原因はわかるが、本人は自覚していないのだろう。
夏侯惇を好きだと言う気持ちを。
ただの家族間とかや友人の好きとは違う、恋愛に対しての好きだと言う事を。
その事に対して未だに気付いいないなんて天然なのか鈍いのか。
(これは気づかせるしかないですね…)
張コウはそう思った。
「なあ、俺って変だよな。男である惇兄を独占したいなんて、女性ならわかるのに」
夏侯淵は自分の感情には驚きを隠せない。
みっともないったらありゃしない。
でも誰彼構わずに笑顔を向けているのが凄く嫌で、話をするのも触れるのも嫌だと思う処もある。
張コウと夏侯淵が話をしていると店の者が注文していたお茶と甘い物を持ってくると円卓の上に並べて置いた。
店の者は一礼すると立ち去る。
「甘い物って桃まんか…俺、これは大好きなんだよな〜」
「そうなんですか、それは良かった」
二人はお茶の香りを味わい、ゆっくりと口に含む。
「美味いなこれ…」
「私はこのお茶が大好きなものでして、気に入りましたか?」
「ああ…」
夏侯淵は嬉しそうに喜び桃まんをかじる。
その笑顔は張コウを惹きよせるには充分過ぎる程に素敵であった。
(ああ、こんな笑顔をしてくれる夏侯淵将軍が夏侯惇将軍に想いを寄せるのがなんか悔しくなります)
だけど彼が好きなのは自分ではないのが辛い。
「将軍は夏侯惇将軍を好きなのですね…」
「好きって俺が?」
張コウの一言に夏侯淵は更に驚く。
「好きと言っても家族や友人に対しての好きとは違いますよね…」
「わからない、惇兄の事は好きだけど、改めて言われるとどうなのかわからないんだ」
未だに恋愛対象として見てなかったので、言われてから自覚するのには時間がかかるようだ。
「夏侯惇将軍を独り占めしたいと言うならそうではないでしょうか?」
「そ、そうかな…」
「私だったら夏侯淵将軍を独り占めしたいと思ってますよ。誰にも触れさせたくないし、この目に映るのは私だけで充分だと思ってます」
張コウは夏侯淵の頬を軽く触れると呟く。
「張コウ、何言って…」
「ふふ、本気にとれたようですね。冗談ですよ…」
張コウはニッコリと微笑む。
「私が言った言葉通りに思っているなら、将軍は夏侯惇将軍を好きなんですよ…」
張コウの指摘はずはり的中していた。
自分は夏侯惇を見るとそう思う節がある。
そして誰かが近くにいると嫉妬してしまう事実がある。
やはり自分は夏侯惇を好きなんだとやっと自覚したようだ。
「張コウ、どうしよう…俺、俺は…」
「何がどうしたんです?」
「惇兄の事が大好きなんだって自覚しちゃった…」
夏侯淵は円卓に額を軽く乗せて呟く。
「自覚したのなら、嫉妬した理由の事も答えは簡単ですよね…」
「ああ…」
悔しいけど、自分は夏侯惇が大好きで側にいて欲しい。
女性のように片思いをしているのだ。
「自覚したのは良いけど…惇兄は俺がこんな想いを持っているなんて知らないから…」
「そうなんですか?」
「うん、絶対に惇兄は従弟として見てると思う…」
嫉妬の理由が解決したのにも関わらず、また新たな問題が夏侯淵にのしかかる。
この気持ちを伝えて良いのかどうなのか。
もし、伝えても断られたら俺は惇兄をまともに接する事も出来ないかも知れない。
夏侯淵は重い溜息をついた。
「しっかりして下さい。夏侯淵将軍…」
張コウは励ますように話掛けてきた。



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[5]嫉妬 (惇淵)
by 奈亜
2011/03/17 00:54
背筋を撫でる張コウの手に、夏侯淵は小さく息を吐き出した。
「大丈夫ですよ・・」
そう言って、顔を上げない夏侯淵の髪の毛を愛しげに撫でながら、苦笑した。
実際、張コウから見て、二人の関係は、決してその様には見えなかった。
二人の関係は、夏侯淵が言うような、片恋ではない。
夏侯淵しかり、彼の想い人である夏侯惇しかり。
互いへの感情は、本人達では分りはしないらしい。
第三者、夏侯淵を見つめ続けた彼だからこそ、分るかもしれない二人の複雑に絡む感情。
張コウは夏侯惇の視線を、気がつけば浴びていることがあった。
反らされる視線はいつだって不機嫌なもので。
夏侯惇は自らの感情に気が付いているのであろう。
殊更、夏侯淵の事となると過保護で、厳しく叱っていたりする。
頼られると断れず、嫌な振りをしながらも面倒を見て。
けれども、時々、距離感を計っているようにも見える。
一線を越してしまわないように、それこそ他の者と大差などないように見せていた。
「将軍の笑顔は、誰だって虜にしてしまうんですから」
頭を撫でながら言われて、夏侯淵は顔を上げると、張コウを見つめた。
「そんな事ねぇだろ・・」
ポツリと漏らした悲しげな声に、張コウは困った様な笑顔を見せると、ポン、と優しく頭を叩いた。
視線を床に落してしまった夏侯淵は、苦しげに眉根を寄せている。
張コウは、そんな夏侯淵の表情に、ギュッと胸の痛みを覚えた。
「そうですかね・・・?将軍の笑顔に救われている人は、たくさんいるんですよ。」
自分もそうなのだ。と言う気持ちを押し隠して、フと彼の想い人の事を考えた。
きっと、あの方もそうなのでしょうね・・。
ぼんやりと考えていると、目の前で夏侯淵の笑い声が上がった。
「それは、違いないかもしれねぇな・・」
苦笑する夏侯淵の想い出したのは、昔の夏侯惇の言葉。
それは夏侯淵が戦場に初めて立った時の事だった。
人を斬った痛みで、どうにかなりそうになってた時。
泣きそうな彼の頭をそっと撫でて、それこそ自分も苦しげに顔を歪めながら言ったのだ。
『淵、笑顔を見せてくれ・・ここにいる者も、俺もそれで今は救われる』と。
無理やり作った笑顔に、答えるように笑った夏侯淵の瞳から、そっと涙が零れた。
あの日が、最初で最後に見た戦場での夏侯淵の涙だった。
「浮かない顔してたら、惇兄に心配かけちまうな・・・俺には笑顔ってね・・・」
言って微笑んだ夏侯淵の顔は、何処となく寂しげだった。
その意味をしっかりと分かっている張コウは言う。
「無理に取り繕う必要なんてないんですよ、将軍・・」
「ん?」
「想いを伝えないまま一緒に居たら、心にも美にとっても負担になってしまうでしょう?」
美は、余計なんじゃねぇか、と思う夏侯淵は、それでも敢えて突っ込まずに頷いた。
「だから伝えてもいいのではないでしょうか・・?」
冷え切ったお茶をすすって、張コウは目を細めて夏侯淵を見た。
夏侯淵は、ひどく戸惑った表情を見せて、手の中のお茶に視線を向けた。
まるで、どうして良いのか分からないようだった。



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