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店に入れば静かな雰囲気が漂い、居心地が良い。 店の者が二人を一つの円卓がある席へと案内する。 案内されるまま二人は窓際にある円卓の席へと腰かけた。 夏侯淵は辺りを見回す。 こんなにゆっくりできる店があったなんて知らなかった。 「張コウ、いい店だな…」 「私のお気に入りの店です。たまに一人でくつろぎたい時とかよく利用してます」 「ふうん、そうなのか?」 それにしてもなんだか甘い匂いがする。 甘味とかそういったものであろうか? 「張コウ、俺こんな所初めてだからどうしたらよいかわからないんだ」 「なら、私がお奨めのお茶と甘い物を頼みますか?」 「ああ、頼む…」 張コウは店の者を呼ぶと、二人分のお茶と甘い物を頼んだ。 その慣れている動作に夏侯淵は黙って見ていた。 「将軍、話しても良いですよ…」 張コウは夏侯淵に話を振る。 張コウの計らいでこの店に気晴らしに茶を飲みにきたのに、いざという時には話づらいのだ。 「…惇兄の事だけど」 「はい」 少し間を置いて夏侯淵は話を始める。 「どうしてあんなにも好かれやすいんだろう?頼りになるし、頭も良いのはわかるけど、なんか皆が惇兄の側にいたいと思っているのかな?」 夏侯淵は疑問を張コウに振る。 張コウは夏侯惇に対しては普通の感情で接してはいるがあまり好ましくはない。 自分が好いているのは夏侯惇よりも夏侯淵なのだから。 「夏侯惇将軍はやはり見た目も凛々しいですし、優しい中で厳しさもある。誰彼構わずではないがやはり夏侯惇将軍は周りの人間をひきよせるなにかがあるのでは?」 「そうなんだよな…惇兄は優しいし、格好良いし、誰もが憧れるんだ。だけど、俺ってすっごい我が儘な事を思ってる」 「何ですか?」 「惇兄を独占したいと思ってる…」 「独占ですか?」 「ああ…」 夏侯惇に対しての嫉妬の原因はわかるが、本人は自覚していないのだろう。 夏侯惇を好きだと言う気持ちを。 ただの家族間とかや友人の好きとは違う、恋愛に対しての好きだと言う事を。 その事に対して未だに気付いいないなんて天然なのか鈍いのか。 (これは気づかせるしかないですね…) 張コウはそう思った。 「なあ、俺って変だよな。男である惇兄を独占したいなんて、女性ならわかるのに」 夏侯淵は自分の感情には驚きを隠せない。 みっともないったらありゃしない。 でも誰彼構わずに笑顔を向けているのが凄く嫌で、話をするのも触れるのも嫌だと思う処もある。 張コウと夏侯淵が話をしていると店の者が注文していたお茶と甘い物を持ってくると円卓の上に並べて置いた。 店の者は一礼すると立ち去る。 「甘い物って桃まんか…俺、これは大好きなんだよな〜」 「そうなんですか、それは良かった」 二人はお茶の香りを味わい、ゆっくりと口に含む。 「美味いなこれ…」 「私はこのお茶が大好きなものでして、気に入りましたか?」 「ああ…」 夏侯淵は嬉しそうに喜び桃まんをかじる。 その笑顔は張コウを惹きよせるには充分過ぎる程に素敵であった。 (ああ、こんな笑顔をしてくれる夏侯淵将軍が夏侯惇将軍に想いを寄せるのがなんか悔しくなります) だけど彼が好きなのは自分ではないのが辛い。 「将軍は夏侯惇将軍を好きなのですね…」 「好きって俺が?」 張コウの一言に夏侯淵は更に驚く。 「好きと言っても家族や友人に対しての好きとは違いますよね…」 「わからない、惇兄の事は好きだけど、改めて言われるとどうなのかわからないんだ」 未だに恋愛対象として見てなかったので、言われてから自覚するのには時間がかかるようだ。 「夏侯惇将軍を独り占めしたいと言うならそうではないでしょうか?」 「そ、そうかな…」 「私だったら夏侯淵将軍を独り占めしたいと思ってますよ。誰にも触れさせたくないし、この目に映るのは私だけで充分だと思ってます」 張コウは夏侯淵の頬を軽く触れると呟く。 「張コウ、何言って…」 「ふふ、本気にとれたようですね。冗談ですよ…」 張コウはニッコリと微笑む。 「私が言った言葉通りに思っているなら、将軍は夏侯惇将軍を好きなんですよ…」 張コウの指摘はずはり的中していた。 自分は夏侯惇を見るとそう思う節がある。 そして誰かが近くにいると嫉妬してしまう事実がある。 やはり自分は夏侯惇を好きなんだとやっと自覚したようだ。 「張コウ、どうしよう…俺、俺は…」 「何がどうしたんです?」 「惇兄の事が大好きなんだって自覚しちゃった…」 夏侯淵は円卓に額を軽く乗せて呟く。 「自覚したのなら、嫉妬した理由の事も答えは簡単ですよね…」 「ああ…」 悔しいけど、自分は夏侯惇が大好きで側にいて欲しい。 女性のように片思いをしているのだ。 「自覚したのは良いけど…惇兄は俺がこんな想いを持っているなんて知らないから…」 「そうなんですか?」 「うん、絶対に惇兄は従弟として見てると思う…」 嫉妬の理由が解決したのにも関わらず、また新たな問題が夏侯淵にのしかかる。 この気持ちを伝えて良いのかどうなのか。 もし、伝えても断られたら俺は惇兄をまともに接する事も出来ないかも知れない。 夏侯淵は重い溜息をついた。 「しっかりして下さい。夏侯淵将軍…」 張コウは励ますように話掛けてきた。
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