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「オレに喧嘩売って、生きて帰れると思ってんのか」
ナルトがせせら笑う。
それに更に鋭く目を細める名前。
徐々に辺り一帯に膨れ上がっていく二人の殺気。
…本気で相手を殺したいと望む、身を斬る様な殺気は私たちに息を吸う事すら許さない。
ナルトへ真っ直ぐ差し向けられた名前の刀からぽつり、ぽつり、と血が滴る。
「サクラ、サスケ。…シカマル、キバ、ヒナタも…」
「!」
小さく私達を呼んだカカシ先生。
恐怖に凍り付いていた身体に鞭を打ってカカシ先生へ振り返る。
「退くぞ」
「「「!」」」
「いいか、殺気に呑まれるな。早く遠くへ走れ」
正常に働かない頭ではカカシ先生の言葉を解釈するのにすら時間を要した。
サスケ君に腕を引かれて、カカシ先生の後を追う。
…振り返ることすら、怖くてできなかった。
*****
「たまには気が利くじゃねーか、カカシの奴」
「そうだな」
一瞬たりとも目を逸らせない。
むせ返る様な殺気の中で、互いに笑みを浮かべつつも相手の瞬き一つ、瞳孔の動き一つを見定める。
「お前分かってんのか?今は任務中だぜ」
「俺に…―――何か、言いたいことは?」
刀を一端下ろして、問うてやる。
ナルトの口元に浮かんでいた笑みが消える。
「殺し損ねて、悪かった…くらいか」
あくまで俺を殺すつもりでいるらしい。
「俺を殺して、木ノ葉を潰すのか?」
「なんだ、バレてたのか」
「…その為に、総隊長に…?」
ナルトが口角を上げた。
…肯定、だな。
「副隊長としてオレに付いて来れば生かしてやったのにな」
「冗談」
三代目の宝である木ノ葉の里を、俺を認めてくれた皆がいる木ノ葉の里を護るためならば。
―――こいつを殺す事だって厭わない。
「外部から来たお前は知らねぇだろうけど、木ノ葉にお前が思ってる程の価値はねぇ」
「お前にとってはそうでも、俺にとったら十分価値がある」
だって
「三代目が命を賭して守り抜いた、…それだけで十分」
「……………。」
―――ああ、これだ。
オレはこいつのこの真摯な眼差しが、吐き気がする程に嫌いなんだ。
三代目が大事だと豪語して
三代目の死に悲しみ涙して
木ノ葉を守るために身を賭して
木ノ葉を誇り、木ノ葉を愛す。
「木ノ葉を潰す前に、まずお前を殺してやるよ」
「…木ノ葉は潰させない」
…目障りで仕方がない。
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