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アスマの言う今回の主の任務は、かの有名な火の国三大祭の一つ―――“茶屋街祭り”の補助と警備。
裏を返せば祭りを楽しんでくる為の任務とも言える。
男装名とナルトの喪失で火の車となっていた木ノ葉の情勢がやっと落ち着き、銀弥としての仕事も一段落ついた今「みんなで祭でも楽しんでこい!」という綱手の計らいでもあった。
「あの次郎長さんが主催だもの。きっと賑やかな祭りになるわね」
「いやー五代目には感謝だな」
そんな綱手の計らいをよく理解していた紅とアスマは完全に浮かれた様子で祭を楽しむ気満々でいる。
下忍たち…いや、正確にはこの一年間でシカマルに続きシノが中忍に昇格したため最早ルーキーとは呼べないが、彼等も久々の合同任務で浮き足立っていた。
最初はご機嫌斜めだった男装名も、時間が経つにつれて治っていた。
(次郎長といえば…)
男装名は記憶を探る。以前綱手探しの旅の途中で一度出会ったことがあるはずだ。
茶の国の長だと綱手が言っていた。
「紅も、次郎長さんのこと知ってんのか?」
「ええ、よく木ノ葉にも遊びに来てくださるのよ。その時に色々とお世話になって…。男装名も知ってるのね」
「綱手探しの道中に、少し」
綱手探し?とキバが首を傾げる。
「ほら、新しい火影候補が綱手様に上がったじゃない?ナルトと自来也様と一緒に男装名君も綱手様を探しにひと月くらい旅をしたのよ」
「あーそういやそんな事聞いたなァ。つーかよくナルトとひと月も旅出来たな男装名!」
日帰りの任務ですらナルトと一緒となると目の前が真っ暗になる。
人が生死の淵に立たされて絶望する様を見たがる鬼だ。
生命にすら関わる事故を態と招くような悪魔だ。
そんな奴と一緒に一か月もいるなんて、死の森に一か月真っ裸で住んだ方がずっと安全に思える。
「わかってないわねーキバ。ナルトは本当は優しくてイイ奴なのよ!」
「…サクラ、お前だってナルトのこと散々鬼だって愚痴ってたじゃねーか」
「あれは別!男装名くんの前では優しいの!里抜けだって二人で協力してたんだから!ね?そうでしょ?」
サクラの笑顔が俺に同意を求める。
…俺の前では優しい?―――どうしたって今の俺には首を縦には触れない。
っていうか頷きたくても首がそもそも痛いんだ。あいつにクナイで刺されて傷口を歯で抉られた所為で。
だけどサクラの笑顔が素敵すぎて…俺は心の中で憎き金髪の野郎を呪いながら仕方なく頷いた。
「―――…ん」
「ほらねー!」
「マジかよ。オレは認めねーけどな」
一行は賑やかに道中を進み、茶の国へたどり着く。
久方ぶりに会った次郎長さんは相変わらずで、挨拶も早々に俺たちは祭りの準備に取り掛かった。
*****
「いいから男装名はどいてろっての!」
「…………。」
それぞれ班に分かれて準備に取り掛かる。
俺とキバとチョウジは屋台の組み立てを担当することになったのだが…
…悲しいことに俺は足手纏いになっている。
なんだか泣きそうだ。
チョウジとキバがせっせと鉄骨を組み立てる横で、俺は女の如く屋台の屋根になる大きな布を広げていた。
いや、俺は女なのだが、女だからと贔屓されるのが頗る嫌いなのだ。
「骨組み完了だね。男装名!それ持って来てー」
「ん」
チョウジの部分倍化した腕が豪快に屋根を張る。
こいつを見ているとつくづく怪力や巨大化を羨ましく思う。
屋台組み立てが終わり、余った鉄骨を倉庫へ終いに向かうのだが、またもや二人は俺の助けはいらないと言う。
「あのなお前等、俺だってこれくらいは持てるんだぞ」
「なに怒ってんだよ」
何故かムスッとしている男装名。
「別に力が弱いからって言ってる訳じゃないよ!僕たち、せめてこういう場面では男装名の助けになりたいからさ!」
「…それならいーんだけど」
ふん、と鼻で笑う男装名を見て、チョウジも笑う。
ああなるほど。こいつ、力が弱ぇの気にしてんのか。とキバは男装名の心情を察する。
「そんなの気にしたって仕方ねーだろ。お前女なんだしよ…ブホェッ!!」
「何度言ったら分かんだよ。口外禁止っつったろ」
「へへへ!男装名、それだけ強く殴れたら十分だよ」
「そうかな」
任務は順調かつ平和に進んでいた。
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