17
冷や汗が蟀谷から流れ落ちるのを感じている俺の目の前には会長がいる。
「いいよ。無理して言わなくても。」
お願いだから、誰が好きなのか言わないで欲しい。
会長が言ったら、俺も言わなきゃいけなくなる。
それに、会長も言ったら関係が崩れると思うのならば、黙っていて欲しい。
「いや、聞いて欲しいんだ」
「だ、だけど俺はまだ好きな人が誰か言いたくないから…」
頑張って笑顔を作って、取り敢えずやめさせようと、そう言う。
会長は少し眉を寄せていたけど、すぐにいつもの顔立ちになる。
「…言わなくて、いい。俺は神楽に聞いて欲しいだけだ」
「それはそれで道義的じゃない。」
それは俺が納得しない。フェアじゃないと狡いとさっき俺が言ったのに、会長だけに言わせる俺最低。
「じゃあ言え」
「命令しないでよ。別に会長が言わなければ済む話しなんだし。」
会長って結構俺様。そこも含めて好きなんだけど、強引過ぎ。
「…じゃあ、戯言だと思って聞いてくれて構わない。」
「それを戯言だとして関係が崩れる事は?」
「……」
「…あるんだ。じゃあ聞きたくない」
やっぱり、会長は皐月が好きなんだ。だから、俺を遠ざけて……遠ざけて?
ん?道理が合わない。
今の関係のままでも、会長は皐月と付き合えたら付き合えたでハッピーエンドじゃん。
何で関係が崩れるの?
眉を寄せて考えていれば、会長は真剣な眼差しで俺の瞳を貫いた。
「関係が崩れても構わない。でも、聞いて欲しいんだ。後悔したくねぇから」
「ぁ…」
俺と同じだ。
俺、後悔しないように告白しようとしているのに、何逃げてるんだろ。もう、いつ告白しても結果は分かっているのに。
そう考えれば、心の重りのような物がストンと落ちたような気がして、心が軽くなった。
モドル