05



結論、全く分からない。

怜斗はヒントすら言ってくれないから分からなすぎて考えていれば頭が痛くなってきた。

あれから既に一週間は経っているというのに。


「委員長、休憩しますか?」

「…そうだな、この書類を生徒会に出したら休憩に入る。先に休憩でもしててくれ。」

「ただでさえ考え過ぎで疲れてるでしょう」

「少しくらいはヒントくれたら疲れてないんだがな」

「それについてはお断りします。」


少し嫌味ったらしく言ってみたが怜斗には意味なく、また呆れた目で見られながら俺は書類を手に生徒会に向かった。

最近、羽山も見掛けなくなったし気分が落ち着かない。

モヤモヤと考えているといつの間にか生徒会室についていた。


「あ?書類?」

「こちらに混ざっていた書類だ。まあ、そういえばそろそろだったな」

「「わーい!体育祭だー!!」」


書類を会長に手渡せば庶務をしている双子がひょっこりと顔を出し、書類を見ると目を爛々と輝かせて喜んでいた。

双子は書類を奪うと休憩をしていたのかソファの方へ駆けていった。

そこには最近、よく会長の傍にいる見知った顔があった。


「コウちゃんコウちゃん!体育祭シーズンだよ!借り物競争でるよね?」

「性別転換リレーでるよね?」

「え、え?」

「「会長を喜ばせなきゃだねー!」」


森岡幸喜。羽山と昔付き合っていただとか怜斗に聞いた。

それを知った時は初めて見掛けた時のあの表情は彼に向けていたものだと知り、親衛隊と同じだと思った自分に意味が分からなくも腹が立ったのを覚えている。


「ぁ、う…えと、」

「お前ら、今の幸喜の顔見んなし」

「「あーあ、嫉妬とかヤな男〜」」

「っうっさい!早く仕事に戻れ!!」


見んなと言っているが、ただ顔が赤いだけだ。熱なら早急に帰ることをオススメする。


「ったく」


大きい溜息をついて席に戻る会長。さりげなく森岡の頭を撫でていた。

真っ赤になり、暑そうに頬を触って手で仰ぐ森岡にオヤ?と感じた。何だか、俺が羽山に対する反応に少しばかり似ていたからだ。

怜斗は羽山に聞くのは避けられるかもしれないから止めておけと言っていたが、森岡ならいいだろうか。

森岡に避けられるなんて事は別にどうでもいいし。

そうとなると善は急げだ。


「森岡、」

「…あ、え?何でしょう?」


声を掛ければ驚いたような顔をされた。話すことすら初めてだから当たり前だろうが。


「森岡は一定の人を見てモヤモヤとか変に熱くなったりとかしたことあるか?何だか感情が揺れ動かされるような…自分で制御出来ないような事とか」

「「「「はあ!?」」」」

「へ?」


質問をすれば、ずっと書類を見ていたはずの副会長や会計も顔を上げて驚いていた。

森岡は聞かれたことは理解しているのだろうが、ポカンと口を開いている。

会長に至っては焦るように森岡を庇い睨みつけてくる。


「てめぇ、幸喜になに聞いてんだよ!」

「いや、ここの所の疑問でな。森岡ならこういう変な感情が分かったりするのかと…にしても、森岡。コイツの相手して疲れないか?」

「俺に何か恨みでもあるのかコノヤロウ。」


最後の言葉は聞き捨てならないとばかりに睨みつけてくる会長にほんのり顔を赤らめさせてチラチラと会長を見る森岡。


「で、どうなんだ?」

「あ、ぅ…っします」


ほんのりと赤らめていた顔を更に赤らめさせ、段々と小さくなりながらもハッキリと答えた。


「幸喜っ」


それを見た会長は嬉しそうに森岡を抱きしめる。
成る程、森岡がそういう気持ちになるのは会長に対してなのか。

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