04



「俺おかしいかもしれない」

「何を今更、」

「…」


翌日になり風紀委員室で書類を整理しながら玲斗に相談するように言えば、彼から冷たい返事が返って来た。

あまりにも酷い返答に思わず口を閉ざす。


「…海里君ですか?」

「っは!?」


何で分かったんだ。

そう思って玲斗を見れば、どんだけ一緒にいたと思うんだと顔に書いてあった。


「今度は何があったんですか?」

「…よく知らないが羽山を見ると自分がおかしくなるんだ」

「……はあ。で?」

「今まで誰を見ても何もならないのに心臓が痛いし息しずらいし言葉も変に詰まる」


変な話しではあるが玲斗は真剣な顔をして聞いてくれている。

それに安心して、俺はこの変な気持ちを伝える。


「…初めてなんだよ、こんなの。」

「俺も委員長の口からそんな話しを聞けるなんて思いもしませんでしたよ」

「っこれは病気なのか!?」

「どうしてそうなったんですか。しかも、まさかそんな言葉も実際に言う人もいるだなんて」


アホの相手は頭が痛くなる、と頭を抱える玲斗におかしな事を言ったかと疑問に思う。


「とりあえず病気ではないので安心して下さい。病院行かれたら先生困ります。てか、俺が恥ずかしい。」

「…そ、そうか」

「それにそれは誰にだって起こりうる現象、感情です」

「玲斗もあるのか?俺は遅すぎたのか?それって…!」

「落ち着け」


結構落ち着いているつもりだ。自分だけではなく皆になると知り安心した。

玲斗の口調が荒くなった事に気付き、とりあえず口を閉じる。


「まず俺はまだです。これには速い遅い関係ないので安心して下さい」

「そうなのか?」

「…でも委員長の場合、安心しておきながら海里君を遠ざけようとするかもしれないので先に言っておきますね」

「うっ」


何故分かったんだ、と思った。実際に安心しきっていたし、でも自分がおかしくなるくらいなら羽山を見かけても見ないフリとかすれば大丈夫だと思っていた。そうすれば、こんなおかしな感じも消えるだろうと思って…


「そんな事をしても委員長はまた別の感情に悩みますよ」

「別?何だ、それは」

「…自分で考えてみるのもいいんじゃないですか?」


初めての感情なのに自分で考えなきゃいけないのは難しいものだ。

少し眉を寄せれば、呆れた顔をする怜斗。

取り敢えず自分でも一番不思議に思っていたことを口にした。


「なぁ、何で俺、羽山の事ばかり気になるんだ?」

「知りませんよ。自分で考えて下さい。」


呆れた目に顔。ボソリと「そこまで気づいてて分からないとか…」と溜息を付いていた。

小声でも聞こえた言葉に首を傾げる。取り敢えず、この感情の原因は羽山なんだ。


「羽山に聞けば分かるか…」

「アホですかアンタ。」

「駄目なのか?」

「そんな事したら羽山君、もしかしたら委員長を避けるかもしれませんよ」


正直、避けてもらった方が俺も変な気分にならなくて済むかもしれない。

そう思えば逆にズキズキと胸が痛んで不機嫌な気持ちになった。

避けられるのは嫌だな。


「…っああ、もう!そんな顔するくらいなら自分で考えて下さいよね!」

「え?」


俺、どんな顔してたんだ?

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