01
その日、里緒は帰りに本屋に寄っていた。
理由は簡単だ。
里緒は最近《家庭教師ヒットマンリボーン》と言う漫画にはまっている。
今の所全巻揃っており、発売日が今日なのだ。
「嘘…ない…」
だが、残念な事に売り切れていた。
「今日を楽しみに待ってたのに…」
悲しそうにポツリと呟くと、諦めがついたようで本屋から出ていった。
「…帰ろ」
買うものも無くなった里緒は家の方へ足を傾けた。
しかし、帰りとなると足が重たくなる。
どうせ、家に帰ったところで“おかえり”と言ってくれる人もいない。
「…あ、」
信号待ちをしていると、里緒の視界にあるものが目に入った。
「ねこ」
目線の先にいる猫が二匹。
その二匹を見て思わず顔が歪む。
一匹の猫は車に引かれたようで血を流して道路の端で倒れていた。もう一匹がその猫を起こそうを顔を近付けて体を押しているのだ。
もう起きやしないのに、そう考えてしまう。
そうこうしている内に目の前の信号が青に変わる。
いつも通り人並みに紛れて一緒に道路を渡る。
「あぶない!」
「きゃーーー!」
「え、」
突然聞こえた悲鳴と止める声、パッと顔を上げれば数メートル先に車があった。
「(あ、私、死ぬのかな)」
ドンッ
そう考える時間がとても長く感じた。
だから、ぶつかった瞬間の痛みなんて感じなかった。
自身の体が宙に舞い地面に叩き付けられる。横たわった自分の視界に数人引かれたのか同じように横たわる人の姿と暴走を続ける車。
痛みすら感じないが、目の前で広がり出す赤い液体に、つい涙が流れた。
「…に、…くな、い」
死にたくない
それが最期の言葉だった。