今年は酉年だね。
そう言うとマツバはジロリとこっちを睨みつけた。
「なんだい、それは。僕に対する嫌みかい?」
「……そんなつもりで言ったんじゃ、ないんだけどな」
"あの日"からマツバは鳥にちょっぴり弱い。
機嫌が悪い日なら、朝を告げる鳥ポケモンすら、疎ましそうに見やる彼。今日はどうやらムシの居所が悪いらしい……目出度い日だというのに。
ため息を吐きながら、炬燵に一段と深く入り込むマツバ。机の上のみかんをこちらに転がしてきた。
剥けってか。
聞こえないように小さく息を吐いて、みかんの外果皮に爪を立てると、一瞬の抵抗の後にプツリと指が内側に吸い込まれた。
そのまま大雑把に皮を剥いでいく。
「はい、剥けた」
均一な橙色を脱いだみかんを、マツバの方に差し出した。
受け取ったマツバは、みかんを見てポツリ。
「僕、白いところいらない」
「そこまで言うなら自分で剥きなさいよ」
栄養あるって、この前テレビでやってたよと言うも、唇を尖らせたまま一向に食べようとしないマツバ。子供ならまだしも、こいつが良い歳こいた成人男性だということが、彼の手に握られたみかんを受け取ることを躊躇させる。
「自分で剥きな」
「嫌」
「大人でしょうが」
「キミが剥いたやつがいい。」
「……子供」
フンと鼻で笑ってやると、マツバの垂れ目がちょっぴりだけ細まった。
そのまま無言で立ち上がったマツバが、炬燵の周りを歩み寄ってくる。しまった、今日は機嫌が悪い日だったと後悔しても、時すでに遅し。こちらまで回り込んできたマツバの顔が近付いて来た。
「……誰が子供だって?」
そう言って、不敵に笑ってみせたマツバは、至近距離で白い筋の付いたままのみかんを自分の中に放り込んだ。
「……へっ?」
そのまま口を動かすマツバ。それを呆けた顔で見る私。何とも不思議な空間のなか、小さくマツバ喉が動いたのを見た。
「な、なんだ、筋付いててもちゃんと食べーー」
ーーれるじゃない。
残りの言葉はマツバに塞がれた。
顔が更に接近したと思えば、唇に感触。
ぬるりと唇を舐められて、少し気を許せば簡単に侵入してきたヨソモノが、私のそれを絡めとった。
「……!!」
甘酸っぱい味に、頭が痺れそうになりそうな時に、突然別の感触が侵入してきた。
んっ?
と思ったのもつかの間で、違和感を残したまま、マツバの顔が離れていった。
「え、口の中に、これ何」
「みかんの果汁以外の全て」
さらっと言いのけたマツバは、また炬燵の向こう側へいってしまった。
…てことは、コレはみかんの残骸か。と、理解した私に、炬燵に身を沈ませながらマツバは、
「僕だって、自分で剥ぐくらいできるさ」
ニッコリ笑ってみせたその顔は、あいも変わらず整っていて、
フツフツと、腑がゆっくりと煮えくり返るのが、自分で容易に感じ取れた。
初キスの味は
いやそれ、潰しただけじゃん!
17/01/01
下品な年明けですね
そう言うとマツバはジロリとこっちを睨みつけた。
「なんだい、それは。僕に対する嫌みかい?」
「……そんなつもりで言ったんじゃ、ないんだけどな」
"あの日"からマツバは鳥にちょっぴり弱い。
機嫌が悪い日なら、朝を告げる鳥ポケモンすら、疎ましそうに見やる彼。今日はどうやらムシの居所が悪いらしい……目出度い日だというのに。
ため息を吐きながら、炬燵に一段と深く入り込むマツバ。机の上のみかんをこちらに転がしてきた。
剥けってか。
聞こえないように小さく息を吐いて、みかんの外果皮に爪を立てると、一瞬の抵抗の後にプツリと指が内側に吸い込まれた。
そのまま大雑把に皮を剥いでいく。
「はい、剥けた」
均一な橙色を脱いだみかんを、マツバの方に差し出した。
受け取ったマツバは、みかんを見てポツリ。
「僕、白いところいらない」
「そこまで言うなら自分で剥きなさいよ」
栄養あるって、この前テレビでやってたよと言うも、唇を尖らせたまま一向に食べようとしないマツバ。子供ならまだしも、こいつが良い歳こいた成人男性だということが、彼の手に握られたみかんを受け取ることを躊躇させる。
「自分で剥きな」
「嫌」
「大人でしょうが」
「キミが剥いたやつがいい。」
「……子供」
フンと鼻で笑ってやると、マツバの垂れ目がちょっぴりだけ細まった。
そのまま無言で立ち上がったマツバが、炬燵の周りを歩み寄ってくる。しまった、今日は機嫌が悪い日だったと後悔しても、時すでに遅し。こちらまで回り込んできたマツバの顔が近付いて来た。
「……誰が子供だって?」
そう言って、不敵に笑ってみせたマツバは、至近距離で白い筋の付いたままのみかんを自分の中に放り込んだ。
「……へっ?」
そのまま口を動かすマツバ。それを呆けた顔で見る私。何とも不思議な空間のなか、小さくマツバ喉が動いたのを見た。
「な、なんだ、筋付いててもちゃんと食べーー」
ーーれるじゃない。
残りの言葉はマツバに塞がれた。
顔が更に接近したと思えば、唇に感触。
ぬるりと唇を舐められて、少し気を許せば簡単に侵入してきたヨソモノが、私のそれを絡めとった。
「……!!」
甘酸っぱい味に、頭が痺れそうになりそうな時に、突然別の感触が侵入してきた。
んっ?
と思ったのもつかの間で、違和感を残したまま、マツバの顔が離れていった。
「え、口の中に、これ何」
「みかんの果汁以外の全て」
さらっと言いのけたマツバは、また炬燵の向こう側へいってしまった。
…てことは、コレはみかんの残骸か。と、理解した私に、炬燵に身を沈ませながらマツバは、
「僕だって、自分で剥ぐくらいできるさ」
ニッコリ笑ってみせたその顔は、あいも変わらず整っていて、
フツフツと、腑がゆっくりと煮えくり返るのが、自分で容易に感じ取れた。
初キスの味は
いやそれ、潰しただけじゃん!
17/01/01
下品な年明けですね