「チャーリー」
名前を呼ぶと、彼は振り返った。燃えるように赤い、柔らかそうな短髪が揺れた。
私の顔を見た瞬間に、彼は嬉しそうな表情を浮かべた。それが私も嬉しくて。少し沈んでいた心が、軽くなったような気がした。
「やあ、君を探してたんだ」
「丁度良かったわ。私もあなたを探してたの。」
「えっ?」
キョトンとした表情のチャーリーに、私は早足で歩み寄った。再び心が重くのしかかってきた。さっきまで考えていたことが、再び頭の中でグルグルと回る。
「ドラゴン使いになるって、本当?」
「え? ……ああ、言い忘れてた……うん、そうだよ」
彼は幸せそうに笑った。けれどその表情が、肯定の言葉が信じられなくて、私は首を横に振った。……本当は、否定して欲しかったのに。
「……クディッチは?プロチームにスカウトされてたじゃない」
「あー……あれは、断っちゃって」
「は、断った!?」
私の声に驚いたのか、ビクリと肩を揺らしたチャーリーは、困ったように眉尻を下げた。
「チャーリーなら、プロでもやっていけると思うのに……だって、伝説のシーカーだよ?」
「ははは、本人を前に伝説だなんてやめてくれよ……ほら、もう決めたことだし。」
ずっと憧れだったんだ、ドラゴンの事を研究する事!
そう言って、あさっての方向へと視線を寄越したチャーリーの表情は、クディッチをしている時と同じくらいに幸せそうだった。
「チャーリーがクディッチしてるの、見るの好きだったのに」
「ご、ごめん」
困ったように笑顔を浮かべるチャーリー。
こんな顔をさせているのは誰?って、私か…。
「研究って………遠いところだよね?」
「ええっと…ルーマニア……だけど、」
「…………遠い、よ…馬鹿」
「うん、ごめん」
チャーリーの将来に私なんかが口をだすなんておかしいのに。
けれど、私の口から出てくるのは彼を引きとめんとする言葉ばかりで、卒業の日にも素直になれないこんな自分が嫌だ。
「ルーマニアだよ?そう簡単に遊びに行けないよ、」
「ごめん」
「こんなに遠かったら、私、浮気しちゃうかもだよ」
「あー…それは、ちょっと、嫌かもだけど…でも、俺の我侭だし」
手で頭の後ろをかくチャーリーは、やっぱり困ったような笑顔を浮かべていた。
(馬鹿、浮気なんかする訳ないのに。)
「チャーリーこそ、浮気しそうじゃない」
「俺が?…まさか!」
そんな訳ないだろう!と、口を尖らせたチャーリーは真面目くさった顔できっぱりと言った。
「君以上の女性には、もう出会えないさ」
「!!!…なっ、な、何を…!」
じろりと見つめると、彼はまた短い髪を揺らして笑顔を浮かべていた。お兄さんが天然のタラシだっていう噂はよく聞くけれど、彼も同じ血が流れているんだなあと改めて感じた。
歯の浮くような台詞に思わず赤面している隙に、彼は私と距離を詰めた(顔が、近い…!)。
するりと自然な動きで私を抱きしめた彼が、耳元で囁いた言葉は、私の赤くなった顔をさらに赤く赤く染め上げた。
「一人前の男になったら、君を迎えに行きたいな」
「!」
「それまで君が…その、俺を待っててくれるか、だけど…」
「ま、待てるよ!!」
「約束、できる…?」
「大丈夫だよ、浮気なんて、嘘だもん。」
赤くなった顔を見られないように、彼の胸に顔を埋めながら、もごもごと言葉を紡ぐと、彼のクスクスという笑い声が降ってきた。
「良かった。」
頭をガシガシとなでられて。
御世辞にも、背が高いとは言えないけれど、男の子らしいがっしりとした体つきや、安心したような声色に、顔を上げるのが更に恥ずかしくなって。
「破ったらブラッジャー食らわせるかんね」
「うおっ!?じゃ、じゃあ、早く迎えに行かなきゃな」
怖ず怖ずと顔を上げると、優しい表情のチャーリーの、澄んだ瞳に私が写りこんでいた。
それから私たちは、どちらからともなく目を合わせて笑い、どちらからともなく、キスを交わした。
(未来に飛ばした、再開の約束)
11/03/09
名前を呼ぶと、彼は振り返った。燃えるように赤い、柔らかそうな短髪が揺れた。
私の顔を見た瞬間に、彼は嬉しそうな表情を浮かべた。それが私も嬉しくて。少し沈んでいた心が、軽くなったような気がした。
「やあ、君を探してたんだ」
「丁度良かったわ。私もあなたを探してたの。」
「えっ?」
キョトンとした表情のチャーリーに、私は早足で歩み寄った。再び心が重くのしかかってきた。さっきまで考えていたことが、再び頭の中でグルグルと回る。
「ドラゴン使いになるって、本当?」
「え? ……ああ、言い忘れてた……うん、そうだよ」
彼は幸せそうに笑った。けれどその表情が、肯定の言葉が信じられなくて、私は首を横に振った。……本当は、否定して欲しかったのに。
「……クディッチは?プロチームにスカウトされてたじゃない」
「あー……あれは、断っちゃって」
「は、断った!?」
私の声に驚いたのか、ビクリと肩を揺らしたチャーリーは、困ったように眉尻を下げた。
「チャーリーなら、プロでもやっていけると思うのに……だって、伝説のシーカーだよ?」
「ははは、本人を前に伝説だなんてやめてくれよ……ほら、もう決めたことだし。」
ずっと憧れだったんだ、ドラゴンの事を研究する事!
そう言って、あさっての方向へと視線を寄越したチャーリーの表情は、クディッチをしている時と同じくらいに幸せそうだった。
「チャーリーがクディッチしてるの、見るの好きだったのに」
「ご、ごめん」
困ったように笑顔を浮かべるチャーリー。
こんな顔をさせているのは誰?って、私か…。
「研究って………遠いところだよね?」
「ええっと…ルーマニア……だけど、」
「…………遠い、よ…馬鹿」
「うん、ごめん」
チャーリーの将来に私なんかが口をだすなんておかしいのに。
けれど、私の口から出てくるのは彼を引きとめんとする言葉ばかりで、卒業の日にも素直になれないこんな自分が嫌だ。
「ルーマニアだよ?そう簡単に遊びに行けないよ、」
「ごめん」
「こんなに遠かったら、私、浮気しちゃうかもだよ」
「あー…それは、ちょっと、嫌かもだけど…でも、俺の我侭だし」
手で頭の後ろをかくチャーリーは、やっぱり困ったような笑顔を浮かべていた。
(馬鹿、浮気なんかする訳ないのに。)
「チャーリーこそ、浮気しそうじゃない」
「俺が?…まさか!」
そんな訳ないだろう!と、口を尖らせたチャーリーは真面目くさった顔できっぱりと言った。
「君以上の女性には、もう出会えないさ」
「!!!…なっ、な、何を…!」
じろりと見つめると、彼はまた短い髪を揺らして笑顔を浮かべていた。お兄さんが天然のタラシだっていう噂はよく聞くけれど、彼も同じ血が流れているんだなあと改めて感じた。
歯の浮くような台詞に思わず赤面している隙に、彼は私と距離を詰めた(顔が、近い…!)。
するりと自然な動きで私を抱きしめた彼が、耳元で囁いた言葉は、私の赤くなった顔をさらに赤く赤く染め上げた。
「一人前の男になったら、君を迎えに行きたいな」
「!」
「それまで君が…その、俺を待っててくれるか、だけど…」
「ま、待てるよ!!」
「約束、できる…?」
「大丈夫だよ、浮気なんて、嘘だもん。」
赤くなった顔を見られないように、彼の胸に顔を埋めながら、もごもごと言葉を紡ぐと、彼のクスクスという笑い声が降ってきた。
「良かった。」
頭をガシガシとなでられて。
御世辞にも、背が高いとは言えないけれど、男の子らしいがっしりとした体つきや、安心したような声色に、顔を上げるのが更に恥ずかしくなって。
「破ったらブラッジャー食らわせるかんね」
「うおっ!?じゃ、じゃあ、早く迎えに行かなきゃな」
怖ず怖ずと顔を上げると、優しい表情のチャーリーの、澄んだ瞳に私が写りこんでいた。
それから私たちは、どちらからともなく目を合わせて笑い、どちらからともなく、キスを交わした。
(未来に飛ばした、再開の約束)
11/03/09