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目の前でまるで他人事のようにしているセレビィがたまらなく憎かった。お前の能力の所為で。私達の、サカキ様の夢を邪魔してくれて、よくもまあそんな暢気そうな表情をしてられるよね。
視線に精一杯の殺意を込めて、セレビィやコトネちゃん、ヒビキ君を睨みつける。

「そんなに睨みつけたって、事実は変わらないよ」

ため息と一緒にヒビキ君の口から飛び出した言葉は、私の顔にカアッと熱を集めた。
そんなの分かってる、分かってるけど仕方ないじゃない。君達が憎くて憎くて、でも一番憎いのはもっと早く来れなかった自分で。だけど私はその怒りを自分にぶつけることが出来るほど強くなんか無いから、結局他人にその怒りを押し付ける。身勝手にも程があるのは、分かってる。

私が弱いから、だから私は他力本願から卒業できないんだ。強く、ならなければ。もっと、もっと。

「じゃ、ボク達は目的を果たした事だし、戻るよ。」

はっと前を向くと、セレビィに笑いかける二人が居た。セレビィも、そんな二人に微笑を見せて、次の瞬間に微弱な光が彼等を包み始めた。ほんのり輝いていた光は、次第に強い光へとなった。

「待っ」
「じゃあ、過去のボク等に宜しくお願いしますね。」
「ビィ!」

気に障る鳴声が洞窟内に響き、彼等の姿は光と一緒に手品のように消えた。きっと、彼達のいるべき未来へと戻ったのだろう。リゼは、薄暗い洞窟の中で、暫く佇んでいたが、野生のズバットの鳴声でハッと我にかえる。

ダメだ、こんな事をしてちゃ、アポロ様に、連絡しないと。

懐からポケギアを取り出して、アポロ様という文字を見つけ出した瞬間に、するりと手からポケギアが逃げ出した。地面にカツンと落下したそれは、勢いあまってもう一度跳ねた。そのままそれは、深い滝壺へと落下していった。ボチャンという音が、防水機能なんてない私のポケギアが、ただのオモチャと化した瞬間を知らせる。

なんてことだ。これじゃ、一刻も早くしないといけない連絡さえ、出来ないじゃないか。

「ズバッ!」
「っ、五月蝿い!」

頭上で鳴いた野生ズバットに、無性に腹が立った。泣きたいのは私の方なんだってば。




堤防決壊まであと、
ぽろりと一粒、頬を伝ったそれに、気付かないフリをして



10/10/30
15/03/17 修正

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